カプーア作品が大分にやってきた!
Naoko Aono

Naoko Aono / Writer
青野 尚子/ライター

アート、建築関係を中心に活動しています。趣味は旅行と美術鑑賞と建築ウォッチング。ときどきドボクも。共著に「新・美術空間散歩」(日東書院本社)。

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カプーア作品が大分にやってきた!

カプーア作品が大分にやってきた!

アニッシュ・カプーア「Sky Mirror」。空が地面に落ちてきたかのような、不思議な作品です。

大分は今、アートの季節。別府ではアニッシュ・カプーアが独占使用権を得た「究極の黒」による作品が初めてお披露目されているほか、県内各地で現代美術作品が展示されています。その一部をちょっとご紹介しましょう。

カプーアの作品が展示されているのはJR別府駅から徒歩15分ほどのところにある別府公園。ここでは3つの作品群が展示されています。一つは例の、光を最大限に吸収するという顔料を使った作品。写真はありませんが、パビリオンの中に入ると真っ黒な穴が空いています。それが平面なのか、穴なのかはわかりません。反対側に回ると、同じ顔料を使っていますが、違う形のものが現れます。でも最初に見たものの裏側を見ているのかどうかはわかりません。いずれにしてもそこには絶対的な闇が出現しているのです。

カプーア作品が大分にやってきた!

カプーア作品がある別府公園は1907年に完成、第二次世界大戦後は米軍に接収されていたこともありました。

もう一つのパビリオンにはカプーアが近年取り組んでいる、ガーゼなどを使ったまるで肉の塊のように見える立体と、グワッシュ(水彩絵の具)による抽象的なドローイングが展示されています。

写真の「Sky Mirror」はタイトルの通り、空を映し出す巨大な凹面鏡。地面に突然空が墜ちてきたような、不思議な気分になれます。

パビリオンのうちの一つで上映されているドキュメンタリーフィルムが、彼の作品の謎を解く手がかりになります。たとえば、インド出身で現在イギリスを拠点にしているカプーアがインドに戻ったときに見た、色鮮やかな布のエピソード。ヨーロッパの色彩感覚とはまた違う色合いの彼の作品は、このときの経験から生まれているようです。インドには顔料を投げ合う祭りもありますが、そんなものも彼のインスピレーション源になっているのかもしれません。

カプーア作品が大分にやってきた!

横から見るとこんな感じ。直径5メートルのこの作品は運んでくるだけでも一苦労だったそう。

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別府公園にはこんなきれいな竹林もあります。

また彼は自作について「negative presence」、マイナスの存在だとも言います。普通、彫刻は空間の中で一定の存在感を主張するポジティブなものです。が、カプーアの彫刻はどんどん引っ込んでいくブラックホールのようなものなのです。

これまでカプーアに関しては、以前テート・モダンのタービン・ホールで展示された「世界最大の彫刻」と呼ばれる作品などに引きずられたのか、「形の人」だというイメージが強かったのですが、そうではなくて「色の人」なのだと認識を変えるに至りました。赤、黒、青といった根源的な色は人の認識や感情に大きな影響を与えます。「ネガティブな彫刻」にそれらの顔料が組み合わされた彼の作品は空間に別の回路を開いているようです。

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日田市の大巻伸嗣作品がある旧料理屋「盆地」。奥に見える大きな石には軒から常に水滴が落ちていますが、これも作品の一部です。

別府から特急で2時間ほどのところにある日田では、大巻伸嗣さんが2会場で作品を展示しています。そのうち一つは、閉館してしまった料理旅館全体を使ったインスタレーション。ネタバレ防止のため詳細は控えますが、場内は一部暗い闇に包まれていて、弱い光と触覚と勘に頼って進まなくてはならないところがあります。かわいい装飾のある室内には大巻さんがつけ加えたと思しき小さなアートも。最後に待っているのは、ふわふわと降りてきては消えてしまう、見ようによっては人の魂のようにも見える作品です。建物は大正時代に建てられ、築100年ほどになるそう。ここを出入りした人々が帰ってきたのかもしれない、などと思えてきます。

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バスから降りて山道を歩いていくと……。

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「大山ダム」です! 残念ながらこの日はダムカードは配布していませんでした……。

10月27に日は日田市内で一晩限りのシークレットイベントがありました。事前に告知されているのは企画・演出がライゾマティクス・アーキテクチャー、出演がヴォーカルのSalyuほか、場所は秘密、という催しです。参加するには事前にツアーに申し込み、集合場所からバスで謎の目的地に連れていかれる、という段取りでした。

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ライゾマティクス・アーキテクチャーによる光の演出。このイベントは昨年7月の豪雨被害復興のために行われました。

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周囲の森が照らされて東山魁夷の絵みたいなことになってます。

そろそろ日も暮れたかな、というころに到着したその場所はダムでした。日田市内から車で20分ぐらいのところにある「大山ダム」です。筑後川の洪水や渇水を調節するために筑後川水系の赤石川に作られた、高さ94メートルの重力式コンクリートダムです。イベントではサーチライトの演出が行われ、闇に浮かび上がる水の流れや幻想的なダムの姿にため息をついたのでした(主に私が。他の人はたぶんライブが目当てです)。

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JR九州の特急列車885系の通称「白いソニック」。

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JR九州の観光列車「ゆふいんの森」。

このほか中津市では高橋匡太さんの光のインスタレーションなども行われています。この季節でも暖かい九州は旅行に最適。JR九州では特急「ソニック号」や観光列車「ゆふいんの森」など個性的な電車も走ってます。温泉やおいしいお酒と一緒にぜひ!

「アニッシュ・カプーアIN別府」大巻伸嗣個展「SUIKYO」は11/25まで。カプーアは入場料1200円、大巻伸嗣個展は入場無料です。

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