カタストロフと美術のちから展
Naoko Aono

Naoko Aono / Writer
青野 尚子/ライター

アート、建築関係を中心に活動しています。趣味は旅行と美術鑑賞と建築ウォッチング。ときどきドボクも。共著に「新・美術空間散歩」(日東書院本社)。

Recent
Post

«

»
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat

過去記事一覧へ

カタストロフと美術のちから展

カタストロフと美術のちから展

ジョルジュ・ルースの作品はだまし絵の原理でできています。

カタストロフと美術のちから展

ジョルジュ・ルース作品の前の床にある星印。ここに立つと、きれいな金色の星が見えます。

森美術館で10月6日〜来年1月20日に開かれる「カタストロフと美術のちから展」は、災害や個人的な悲劇をアーティストはどう表現したのか、またそこから立ち直るときに美術はどのような役割を果たすことができるのか、を検証する展覧会です。

この展覧会に、昨年21_21 DESIGN SIGHTで行われた「そこまでやるか」展にも参加してくれたフランスのアーティスト、ジョルジュ・ルースが出展しています。これは東日本大震災で被災した宮城県のカフェで作った、青と白の星が浮かび上がるインスタレーションを再現したもの。今回は星が金色になって、希望の星のように輝いています。

カタストロフと美術のちから展

トーマス・ヒルシュホーン「崩落」。

展覧会場の最初に現れるのはスイスの作家、トーマス・ヒルシュホーンが作った”廃墟”。2階建ての家が崩れ落ちてしまっています。でもよく見ると瓦礫は段ボールやビニールテープで作ったフェイク。壁には「すべての創造は、破壊から始まる」(ピカソ)と言った言葉が書きつけられています。

カタストロフと美術のちから展

ミロスワフ・バウカ「石鹸の通路」。通り抜けるといい匂いがします。

ポーランドのミロスワフ・バウカは石鹸を塗った通路を作りました。石鹸は赤ちゃんが生まれるときも、誰かが亡くなったときも体を洗うために使います。生と死に密着に結びついているのです。

カタストロフと美術のちから展

スウーンのインスタレーション「メデイア」。

アメリカのアーティスト、スウーンのインスタレーションには冷徹な祖母をモデルにした氷の女王や、母をモデルにした魔の王女「メデイア」やタランチュラが登場します。安らぎの場所であるはずの家ですが、惨劇が待ち構えているようにも見えます。彼女は肉親が他界したことをきっかけに、自身のトラウマと向き合うべくこの作品を作りました。

カタストロフと美術のちから展

ヒワ・K「鐘」。ドキュメンタリー映像も面白いです。

イラク出身、難民としてドイツに渡り、現在ベルリンを拠点としているヒワ・Kは、イラクで集めた武器の残骸を溶かして”平和の鐘”を作りました。日本でも太平洋戦争中に金属供出が行われましたが、この鐘は逆のプロセスでできています。同じ金属が武器にもなれば、平和を祈る鐘にもなる。そんな矛盾した状況を現しています。

カタストロフと美術のちから展

アイ・ウェイウェイ「オデッセイ」の部分。

最近では社会活動家としても活躍しているアイ・ウェイウェイは巨大な壁紙を作りました。ギリシャの壺絵ふうの絵柄をよく見ると難民のテントや船などと一緒に、「国境を開けろ」「誰も違法ではない」などと書かれたスローガンが見えます。もはや手詰まりになったかに見える難民問題をこんな形で告発しています。

カタストロフと美術のちから展

オリバー・ラリック「ヴァージョン(ミサイルのヴァリエーション)」。

2008年、イラン革命防衛隊がミサイルの発射に成功したと発表、4発のミサイルが発射される写真を発表しました。が、すぐに合成写真だということがバレてしまい、後にオリジナルの3発しか発射されていない写真を発表し直すことになります。オーストリアのオリバー・ラリックはこの”フェイク・ニュース”事件からヒントを得てこの作品を作りました。まったくミサイルがないものから、数十発も飛んでいるものまで、パロディのような作品が”真実とは何か?”を問いかけます。

多彩な角度から災害や戦争、個人的な悲劇と、そこからの回復を見つめる「カタストロフと美術のちから展」は2019年1月20日まで、森美術館で開催されます。

PAGE TOP

カタストロフと美術のちから展