ヴェネチア建築ビエンナーレ2018
Naoko Aono

Naoko Aono / Writer
青野 尚子/ライター

アート、建築関係を中心に活動しています。趣味は旅行と美術鑑賞と建築ウォッチング。ときどきドボクも。共著に「新・美術空間散歩」(日東書院本社)。

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ヴェネチア建築ビエンナーレ2018

ヴェネチア建築ビエンナーレ2018

ドイツ館は右側から入ると一面、黒い壁が迎えるという構成。

ヴェネチア建築ビエンナーレ2018

ベルリンの「和解の礼拝堂」模型。ベルリンの壁のすぐそばに建てられていたため破壊されてしまった旧礼拝堂の破片を使い、壁の崩壊後に再建したもの。こちらのウェブに経緯があります。http://www.kapelle-versoehnung.de/bin/pdf/kapelle-japanisch.pdf

今年もまたヴェネチアに行ってきました。2年おきに開かれている建築ビエンナーレが目的です。今回のビエンナーレのテーマは「フリースペース」。文字通り、自由に解釈できるテーマですが、今年はなぜかどのパビリオンもリサーチ系で攻めてきました。たとえばドイツ館は「ベルリンの壁」が崩壊してから28年、壁が立っていた年月と同じになるのを記念して物理的、あるいは政治的、心理的な壁と建築についての考察をしています。ベルリンの壁だけでなく旧東西ドイツの国境や、現在の朝鮮半島やイスラエルなど、今もそびえる”壁”についての研究が並びます。

ヴェネチア建築ビエンナーレ2018

アメリカ館、ディラー・スコフィディオ+レンフロ他の展示。

ヴェネチア建築ビエンナーレ2018

イギリス館の屋上に作られたテラスから。ヴェネチアの海が一望できます。

アメリカ館では複数の建築家がやはりリサーチの成果を発表しています。ディラー・スコフィディオ+レンフロは衛星が1日2回、昼と夜にとる地球の写真からおもに人口と産業の分布について考察しました。彼らによると、夜間に明るいところに人口が集中し、暗いところは人口密度が低いという傾向はあるけれど、必ずしもすべての場所がその通りではないのだそう。衛星写真の精度を上げていくと、人口が多くても電気の供給が充分でないために暗いところもあれば、軍事上の機密から暗くされているところもある、といったことがわかってきます。衛星写真から地球上の格差や政治的思惑が浮かび上がるのです。

建築家のカルーソ・セント・ジョンとアーティストのマーカス・テイラーがコラボレーションしたイギリス館は内部に何も作らず、その代わりに屋上にテラスを作りました。何もないパビリオン館内ではときにパフォーマンスやトークが、屋上テラスでは毎日4時にお茶が振る舞われます。一時的なコミュニティやコミュニケーションを発生させる実験自体がこの館の展示なのです。

ヴェネチア建築ビエンナーレ2018

通常ならあり得ない間取りのスイス館。

ヴェネチア建築ビエンナーレ2018

日本館の展示風景。

今年の金獅子賞をとったのはスイス館でした。パビリオンに入ると大小さまざまなドアや部屋が並びます。スペースの大小が人間心理に与える影響を考察するものです。

日本館は今和次郎が提唱した「考現学」を現在に甦らせるコンセプト。人々の暮らしと空間との関連をリサーチしたドローイングやオブジェが並びます。

ヴェネチア建築ビエンナーレ2018

オランダ館の展示。

ジョン・レノンとオノ・ヨーコが有名な「ベッド・イン」を行ったのはアムステルダムのホテルでした。オランダ館ではそのホテルの客室が再現されています。ジョンとヨーコがベッドに寝そべり、その回りをおおぜいの記者が取り囲む、という写真はよく見ますが、その部屋はこんな感じだったのか、と感慨にふけってしまいました。

ヴェネチア建築ビエンナーレ2018

インドのアヴァサラ・キャンパス。

ヴェネチア建築ビエンナーレ2018

スイスの建築家、ヴァレリオ・オルジャティのインスタレーション。

ヴェネチア建築ビエンナーレ2018

SANAAの透明なパビリオン。

もと造船所だったところを改修した「アルセナーレ」ではさまざまなプロジェクトが展示されています。「アヴァサラ・キャンパス」は西インドにある女子学生のための寮がある学校。床は廃材をリサイクルしたもの、シャンデリアもムラノのガラス職人が再生ガラスで作ったものです。天井にはアーティストが天然顔料でさまざまな色を塗りました。ちょっとル・コルビュジエを思わせます。

ヴァレリオ・オルジャティのインスタレーションはたくさんの白い柱が立ち並ぶというもの。柱の密度で空間の質が変わるのを実感できます。SANAAの「ぐるぐる」は始まりも終わりもないスパイラル状の空間。中に入ることはできませんが、極薄のフィルムがかろうじて内外を分けるのを実感できます。

いつにも増してアカデミックな雰囲気のあるヴェネチア建築ビエンナーレ。今年は11月25日までの開催です。

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ヴェネチア建築ビエンナーレ2018

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