グリッドから生まれる詩
Naoko Aono

Naoko Aono / Writer
青野 尚子/ライター

アート、建築関係を中心に活動しています。趣味は旅行と美術鑑賞と建築ウォッチング。ときどきドボクも。共著に「新・美術空間散歩」(日東書院本社)。

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グリッドから生まれる詩

グリッドから生まれる詩

中央がラース・ミュラー、右は美術史家のガブリエル・シャードさん。左は通訳の方です。吉川さんの写真は撮りそこねました……。

5/17から六本木のアクシス・ギャラリーで吉川静子個展「私の島は何処」が始まりました。Pen-Onlineのニュースでもお知らせした展覧会です。事前にウェブや写真で作品は見ていたわけですが、実物は全然違うのに驚きました。色面や鉛筆のテクスチャーがとても繊細で、実際は平面なのに独特の立体感というか、ゆらぎのようなものがあるのです。

展覧会は70年代の初期作品から始まります。この頃の「色影」というシリーズは小口に色を塗った正方形の薄い板を組み合わせたもの。白い正方形に落ちる色の影が淡い文様となって浮かび上がります。ギャラリーでは当然、人工照明で見ることになりますが、本当は自然光で見るのがオススメだそう。太陽の動きにつれて色の影も表情を変えるからです。吉川はその後、絵画に集中することになります。

吉川の絵は、彼女なりの規則で色や線を配置していくことでできるのだそうです。それはグリッドを基本としているように見えます。吉川が拠点としているスイスのグラフィックやエディトリアルデザインの基礎となっているグリッド・システムにも通じるものがあります。でも決して機械的なものではなく、ポエティックなものが広がります。

彼女の作品集を出版したラース・ミュラーは「吉川の絵には理知的、数学的なものと精神的なものが共存している、とても稀有な作家だ」と言います。会場には吉川のアトリエで撮られた映像が流れています。「僕は彼女が描くのを見るのも好きなんだ」とミュラー。筆の先にほんのわずかに絵の具をとり、コップで混ぜ合わせ、細い帯をていねいに塗っていく手つきは茶道か写経のよう。ミュラーは「彼女の作品には書道の影響もあると思う」とも言います。

吉川の絵はどちらかというと薄塗りです。でもそこに実際よりも深い奥行きがある。それは二畳の小さな空間で宇宙の無限の広がりを表現する茶室の精神に通じるものかもしれません。個展の会期は5月27日までのわずか10日間。東洋と西洋の間の細い線を慎重に行き来する吉川の世界のように、うかうかしていると消えてしまう幻のような展覧会です。

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主催者から会場写真が来たので追加します。上のテキストで何を言ってるか、もう少しわかりやすいかと思います。(Photo by Yuta Fukitsuka)

グリッドから生まれる詩

初期のレリーフと一緒の吉川静子さん。(Photo by Yuta Fukitsuka)

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