〈ルーヴル・アブダビ〉という天国へ
Naoko Aono

Naoko Aono / Writer
青野 尚子/ライター

アート、建築関係を中心に活動しています。趣味は旅行と美術鑑賞と建築ウォッチング。ときどきドボクも。共著に「新・美術空間散歩」(日東書院本社)。

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〈ルーヴル・アブダビ〉という天国へ

〈ルーヴル・アブダビ〉という天国へ

例の複雑な模様の屋根から後光のように光が落ちてきます。思わずひれ伏したくなる光景です。

〈ルーヴル・アブダビ〉という天国へ

とにかくでかい。画面下左にぽつぽつと見えるのが人です。巨大なUFOが着陸して人類を……、とかいうSF映画みたいです。

これはもう天国かな、と思いました。ジャン・ヌーヴェル設計の〈ルーヴル・アブダビ〉です。Penのアラブ特集にも登場してますが、実物は予想をはるかに超えたものでした。いや死ぬ前に来てよかった。

〈ルーヴル・アブダビ〉はアブダビのカルチュラル・ディストリクトに昨年11月、ようやくオープンしたルーヴル美術館のランス(フランス)に次ぐ分館です。周りにはゲーリーのグッゲンハイム美術館分館や安藤忠雄の海洋博物館などが造られる予定ですが、まだ進行中。こちらが一足先に開館しました。

〈ルーヴル・アブダビ〉という天国へ

屋根から落ちる強い光が壁や床に複雑な模様を描きます。

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ドアの装飾。1500年頃のエジプトのもの。こういったパターンをヌーヴェルなりに変換していくと、この屋根になるわけです。

例の屋根は三角形、四角形、八角形などの幾何パターンを組み合わせたものです。イスラム教では偶像崇拝を固く禁じているため、モスクの装飾には幾何学模様か、アラブ文字をデザイン化したものが使われているのはご存じの通り。ヌーヴェルはその幾何学模様を引用しているわけですが、彼は独特の変換システムを使っているようで、光の通り方がより複雑なものになります。

〈ルーヴル・アブダビ〉という天国へ

スクリーンその1。

〈ルーヴル・アブダビ〉という天国へ

スクリーンその2。

〈ルーヴル・アブダビ〉で圧倒されることの一つは光、とくに透過光の使い方です。窓はすべて紗のようなスクリーンか、完全に閉じることができるような設計になっているようです。そこに太さの違う縦横の格子を組み合わせたりして、場所ごとに光の入り方を変えています。〈ルーヴル・アブダビ〉は海辺にあるので、窓やスクリーンを通して海面にきらめく太陽光も入ってきます。展示室に開けられた窓や、展示室と展示室をつなぐ通路に開けられた窓がそれぞれ違う光をまとっています。もちろんそれは時間帯や天候によって刻々と変わっていきます。歩いて行くごとにほんの少しずつ違う光が現れる仕掛けになっているのです。

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館内はフラッシュを使わなければ撮影自由。ここも人がいない瞬間を狙って撮ってますが、いつも誰かが群がってる人気のインスタ・スポットでした。

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奥にダヴィッドの有名なナポレオンの絵が。本当はロバに乗ってたのに白馬に乗ってたことになってたりする絵です。画家が忖度したのでしょうか?

展示室はそれぞれ大きさも違えば、床と天井もその部屋の個性に合わせて少しずつ変わっています。が、床と天井に関してはあまりにさりげないので私は途中まで気づきませんでした。床は異なる色合いの石を使っているようです。天井はパターンの違うガラスやスチールメッシュを数種類ずつ組み合わせています。アートに集中してもらうことを最優先した空間です。

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天井の一例。メッシュや磨りガラスのような素材を通じて照明が作品を包むように照らします。

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大きな窓のある休憩コーナー。

休憩コーナーの右にある縦に3つ並んだ丸いものはたぶん監視カメラです。もちろん他の場所にもあります。もはや監視カメラまで神々しく見えてきます(笑)。

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右はガンダーラ仏像、左は古代ローマ帝国の彫像。ガンダーラのイケメン仏像は、東京では松岡美術館のコレクションが充実しています。

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中央は800〜900年ごろのイラク、右は700〜800年ごろの中国の器。イスラムのデザインではときどき、器にこんなふうに文字があしらわれていることがあって、おしゃれだなー、と思います。

さて、いつまでも床とか天井とか見てないで展示物も見ましょう。〈ルーヴル・ランス〉もそうですが、こちらも地域や様式ごとに分類してしまうのではなく、東西を行き来しながら美の発生やその発展をたどれるような構成になっています。上の写真には「ガンダーラとローマの対話」といった説明文がついていました。その他にも日本が誇る縄文土器と中国やアフガニスタンの土器を並べたり、日本とヨーロッパの甲冑を並べたりしています。

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ジャコメティはシルエットもかっこいいです。

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マーク・ロスコとヨゼフ・アルバースが並ぶ幸せな光景。

〈ルーヴル・アブダビ〉は〈ルーヴル・ランス〉よりかなり大きく、展示されている作品数も相当あります。屋根見て窓と天井と床を見て、膨大な展示品を見ているとけっこう時間がかかります。が、本家のパリのように1日かかけても見終わらない、ということはないので、満足感もあります。それにしてもヌーヴェルは天才だ。そう思った1日でした。

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