「野生さんぽ」で六本木の縄文へ
Naoko Aono

Naoko Aono / Writer
青野 尚子/ライター

アート、建築関係を中心に活動しています。趣味は旅行と美術鑑賞と建築ウォッチング。ときどきドボクも。共著に「新・美術空間散歩」(日東書院本社)。

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「野生さんぽ」で六本木の縄文へ

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中沢新一さん。朝日神社の裏手、古墳と神社の間にある墓地で。

21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「野生展:飼いならされない感覚と思考」の関連プログラム、「野生さんぽ」に参加しました。展覧会ディレクターの中沢新一さんが著書「アースダイバー」で解き明かした東京の古層の記憶を、実際に歩いて確かめようというフィールドワークです。

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「朝日神社」で説明する中沢さん。

六本木・赤坂エリアはかつて、海に突き出た岬でした。正確には現在の麻布十番駅から赤羽橋駅にかけてと、赤坂見附駅〜溜池山王駅〜虎ノ門駅が海、愛宕神社や東京タワー、増上寺があるあたりが岬です。かつての海はその後谷になり、半島は高台になりました。谷は芸能にまつわる人々を引き寄せます。高台は武家屋敷などが建つ高級住宅街でした。この性格の違う二つの場所が入り乱れているのがこのエリアの特徴です。

江戸時代になっても遠浅の海が残っていて、徳川家康は江戸入城してすぐに銀座や虎ノ門などを埋め立てていきました。「マメだったんですね」と中沢さん。土木事業で国土を拡張するオランダみたいです。そうこう言いながらまずは「朝日神社」へ。

「ここにはかつて弁財天が祀られていたといいます。弁財天はインドでは『サラスヴァティー』と呼ばれる、水辺で琵琶を弾いていた女神です。古代的に考えるとここは水・太陽の光・女神の組み合わせなんです。環太平洋地域で広く見られる神話で、水辺の巫女が朝日を胎内に受けて神の子を産む、というものがあります。その子は日子(ひこ)と呼ばれ、母は日女(ひるめ)と呼ばれる。その中の、最上級の女神が大日女(おおひるめ)なのですが、これは卑弥呼の別名です」

朝日神社の裏手には古墳がありました。古墳の周りには墓地と寺と神社がワンセットになっているところが多いのだそうです。古墳は死を意味します。朝日神社で太陽の光を自分の体に受け入れる巫女は再生の象徴です。死と再生をペアにするために、このような組み合わせになっているのだそう。

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赤坂氷川神社での「野生さんぽ」参加者。高倍率の抽選を勝ち抜いた運のいい人たちです。来年もきっといいことがあるはず。

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赤坂氷川神社から降りる階段には「三つ巴」の紋が。これは渦を表すもので、海に関係があることを示すのだそうです。

「野生さんぽ」は六本木墓苑を経由して赤坂氷川神社に向かいます。ここでは素戔嗚尊(すさのおのみこと)と奇稲田姫命(くしいなだひめのみこと)が祀られています。奇稲田姫命は八岐大蛇(やまたのおろち)の生け贄にされそうになっていたところを素戔嗚尊に助けられました。こうして二人が夫婦になったのが国の始まりにつながっていきます。

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「四合稲荷神社」と書いて「しあわせいなりじんじゃ」と読みます。

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「四合稲荷神社」の由来。ちゃんと勝海舟の名前があります。

赤坂氷川神社の脇には「四合稲荷神社」という小さな祠があります。これは、この付近にあった4つの神社を合祀したもの。4つの神社を合わせたので「四合」、「しあわせ」稲荷神社となりました。命名者はなんと勝海舟なのだそう。親父ギャグ好きだったとは……。

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「種徳寺」には立つ五輪塔。下から「地水火風空」の5つの要素を表しています。

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「種徳寺」には実際に「地水火風空」と書かれた五輪塔もあります。

さらにTBS近くの「種徳寺」におじゃましました。

「ここの墓地には江戸時代にさかのぼる墓石がたくさんあるんです」と中沢さん。

墓地には五輪塔が立っていました。高さ2メートル以上あるりっぱなものです。五輪塔は世界を形成する「地水火風空」の5つの要素を表すもの。人間は「地水火風空」の要素でできていて、死ぬとその要素に戻っていくことを示します。

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「種徳寺」で。これはとくに説明がなかったのですが、砲弾を模したものでは?

「野生さんぽ」では21_21 DESIGN SIGHTを出発して2時間あまり、8000歩ほど歩いて21_21 DESIGN SIGHTに戻ってきたのですが、なんだか異世界をのぞいて、また現実世界に戻ってきた気分です。つい最近建てられたぴかぴかのビルの後ろに縄文時代が口を開けている、そんな裂け目を見たような散歩でした。

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