2018年極私的映画ベスト。
Makoto Sasaki

Makoto Sasaki / video director/ movie director
佐々木 誠/映像ディレクター/映画監督

98年より音楽プロモーション映像やテレビ番組などを演出。ドキュメンタリー映画とドキュメンタリー風のフィクション映画も監督している。今まで撮影で訪れた場所で好きなのはケニアとインド、そしてハワイ。
http://sasaki-makoto.com

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2018年極私的映画ベスト。

2018年極私的映画ベスト。

あけましておめでとうございます。

年末ギリギリまで映画を観ていたので、毎年恒例の個人的映画ランキング、年越してからになりました。

良かったらお正月休みの暇つぶしにでも読んでいただければ幸いです。


昨年は、5月くらいまで複数の作品を同時に制作していたので、時間的、気分的に映画はあまり観に行けませんでした。

代わりに夜中、仕事が終わった後に『ゲーム・オブ・スローンズ』と『ツインピークス リターンズ』(どっちも歴史に残る大傑作ドラマ!)を観てまして、それだけが楽しみな日々でした。


その後、下半期で怒涛の如く観まくり、今年劇場でおそらく合計150本くらいは観に行きました(1日4本観たこともあります・・)。

それでもハネケの『ハッピーエンド』や話題の『バーフバリ』、『台北暮色』『愛しのアイリーン』『馬を放つ』など絶対に外しちゃいけない作品も多く見逃してしまっているので、本当のランキングってなんだろう、とこれまた恒例で思っています。w

それでも傑作が多い年だったので、ベストを選ぶのは例年以上に大変でした。


リバイバルもよく観に行きました。

『2001年 宇宙の旅』IMAX(2回行きました!)、ロバート・アルドリッチ特集で『キッスで殺せ!』『ふるえて眠れ』、ウィリアム・フリードキン『恐怖の報酬』、フレデリック・ワイズマン特集(10本くらい観ましたが『少年裁判所』が特に良かったです)など、伝説の傑作を劇場で観る、という最高の娯楽を堪能しました。やっぱ映画は映画館だな、とあらためて実感。


あと、18年は「映画を作ることを描いた映画」が多く公開された年でもあります。『カメラを止めるな!』、『ディザスター・アーティスト』、『ブリグズビー・ベア』といった傑作揃いですが、この傾向は、多様性、コミュニケーションなど今日的なテーマを描くとき、その入れ子構造との親和性が高いからかな、と勝手に思っております(『アメリカの夜』『僕らのミライへ逆回転』など過去の名作もありますが)。

ちなみに今年公開する私の新作『ナイトクルージング』も「映画を作ることを描いた映画」です。
https://nightcruising.net


といろいろ前置きが長くなりましたが、ベスト10+αです。



①『アンダー・ザ・シルバーレイク』

デヴィッド・ロバート・ミッチェル


観た瞬間から今年のナンバー1は決まっていた。

ロサンゼルス、消えた美女。ポップカルチャー、都市伝説に隠された秘密の暗号。オタク知識を活かして惚れた美女失踪の謎を探る“何者でもない”主人公———。

私の大好物を詰め込んだこの新世代フィルム・ノワールに、冒頭からエンドロールまで興奮させられっぱなしだった。

観客は、主人公が読み解く暗号に翻弄されながら、監督が「映画」に仕掛けた暗号を読み解かないと全貌を楽しめない。

大胆かつ繊細な多層構造。

「構造好き」にとってはたまらない、完璧な映画だ。

3回観に行ったが、まだまだ謎が残っている。

おそらく永遠に楽しめるだろう。




②『ストップモーション、スローモション』

栗原みえ


日記映画の第一人者である栗原さんがタイ、ラオス、ミャンマーなどを数年かけて旅して、その撮りためた記録を編集した作品。

各地で出会う人々との交流は、栗原さん自身の独特のナレーションで語られ、複数のデジタルカメラそれぞれの機能をフルに使用し、躍動感と光の美しさに溢れた唯一無二の「映像日記」として綴られる。

最終的に、狙ってないようで、狙っているようで、多分狙っていない(!)エモーショナルなラストシーンに集約し、その奇跡的なショットにやられてしまった。

「瞬間」は「永遠」、ということを改めて意識した。

人の作品観て嫉妬することはほぼないのだが、これは猛烈にジェラシー!

私の中で最高に「カッコ良い」記録映画。


1月18~25日にイメージフォーラムで特集上映するのでご興味ある方は是非。

http://www.imageforum.co.jp/cinematheque/1011/index.html

2018年極私的映画ベスト。


③『ノクターナル・アニマルズ』

トム・フォード


17年末に公開されたが、私は年明けてから観たのでランキングに。

オープニングでまず度肝を抜かれ、そのまま最後まで、とにかく全編圧倒されっぱなしだった。

ファッションデザイナーであるトム・フォードが仕掛ける現実と小説、過去と現在、愛と復讐、そして登場人物それぞれの真実。

関係性の機微を描いた非情な作品で、その複雑な構成は、数通りの解釈を楽しめるように計算され尽くされている。

本業が映画監督ではないのに、2作続けて違うタイプの傑作を放つトム・フォードは異常な天才だな、と。

それにしても「ギレンホール傑作出がち説」を唱えたいくらいジェイク・ギレンホール出演作にハズレなし!





④『フロリダ・プロジェクト』

ショーン・ベイカー


フロリダにあるディズニーワールドのすぐ側、経済的に困窮している人々が多く住むモーテル。

そこで若い母親と暮らす6歳の女の子の視点でその日常が描かれる。

これがもうキツい現実であり、キラキラなファンタジーでもあるのだが、どこかノスタルジックな気分にもさせてくれる。

カメラは常にローアングルで、彼女の「世界」の断片を紡いでいく。

このサブプライム住宅ローン問題以降のアメリカの縮図は、皮肉なほど美しいショットで切り抜かれ、観る者にボディブローのように効いてくる。

最も幻想的で、最も残酷なラストカットは映画史に残るだろう。




⑤『Caniba』

ルーシァン・キャステーヌ=テイラー&ヴェレナ・パラヴェル


「パリ人肉食事件」で知られる佐川一政を題材としたドキュメンタリー。

現在、東京近郊で弟ともに住む佐川のインタビュー映像で構成されているのだが、全編極端なクローズアップで展開され、常にピントも定まらず、ほとんどその全貌が映像から伝わってこない。

話している内容もほぼ脈略がなく、音声もあまり良くないので聞き取りづらい。

だが、最後まで全く目が離せないのだ。

そもそもこの監督たちは、言葉を信用していないし、映っているものすら信じていないのだろう。

だから、佐川の凄みと哀愁、ユーモアとインテリジェンスが“直視できない部分”から滲み出てくる「この手法」に行き着いたのだろうけど、これがほんとヤバかった。

そして、後半、その弟との関係が描かれるのだが、もう、これが・・・(口に出すのもおぞましい)。

日本で正式に劇場公開されるかわからないが是非観ていただきたい。





⑥『ラッキー』

ジョン・キャロル・リンチ


公開時にこのブログで長文書いたのでこちらを是非!

https://www.pen-online.jp/blog/m-sasaki/1520412130/





⑦『ニッポン国VS泉南石綿村』

原一男


巨匠・原一男監督が『全身小説家』以来約20年ぶりに撮った、待望のドキュメンタリー作品。

これまで『ゆきゆきて神軍』の奥崎謙三、『全身小説家』の井上光晴といった強烈なキャラクターを軸に作品構成をしていた原監督が、本作では主人公を設定せず、アスベスト被害により国に人生を変えられた人々を捉え、その戦いを描く。

この約8年間の記録は、原監督の執念とニッポン国への怒りに満ちている。

そして原監督の代名詞である「アクションドキュメンタリー」としてこれまで以上に完成されているので、長尺215分間(!)最後まで揺さぶられ、気をぬく暇はなかった。

巨匠の命がけを目の当たりにし、身を引き締めざるを得ない。




⑧『サファリ』

ウルリヒ・ザイドル


「パラダイス」三部作の文字通りの“鬼才”ウルリヒ・ザイドルが撮ったドキュメント作品。

裕福な白人たちによるアフリカでのトロフィー・ハンティング。

彼らは「命の大切さを学ぶために必要なこと」と嘯くが、ハントされた動物たちは"トロフィー"にされるため、現地民である黒人の人々が解体していく。

その全てを淡々と、自身の劇映画と同じようにシンメトリックな構図、長回しを多用し、カメラで「ハント」していくザイドル。

ナレーションなし、BGMなし。

何も語らない映像で雄弁に語る、相変わらずの「鬼」っぷりが十分に発揮された作品。




⑨『犬ヶ島』

ウェス・アンダーソン


近未来の日本、メガ崎市を舞台に勇敢な犬たちと少年の冒険を描く、全編精巧なパペットを使ったストップモーションアニメ。

奇想天外な設定にも関わらず的外れな「トンデモ感」がないウェス・アンダーソンのセンスは相変わらずだが、その日本文化へのリスペクトっぷりに脱帽(ウェスありがとう!と言いたい。w)。

戦後すぐの荒廃した日本をベースに、黒澤や本多の映画、広重や北斎の浮世絵の構造、和太鼓の演奏、寿司職人が箱寿司を調理する場面、登場人物が着用する伝統的な衣服など、とにかく全編ディティールの再現が凄まじい。それを撮影に1年半かけてストップモーションアニメとして完成させたのは、もはや「異常な愛情」と呼ぶしかない。

そんな愛と執念が生んだ本物の「クールなニッポン」を堪能させてくれる愛すべき傑作。





⑩『ア・ゴースト・ストーリー』

デヴィッド・ロウリー


突然事故死した男Cは、死体安置室でかけられていたシーツをそのまま被ったゴースト(まるでオバQ。でもギャグじゃない)となり、自分がいなくなった家で愛する妻Mを見守り続ける。

しかし、妻が家を去った後もCは、そこに留まり続ける。妻の最後のメッセージを探るために。

そこから、彼の長い「旅」が始まる。

全編ほぼ台詞はないし、この家がほとんどの舞台で、ゴーストはシーツを被りっぱなしだ。

しかし本作は壮大な叙事詩であり、輪廻をめぐる「存在」について深く考えさせられる(手塚治虫の『火の鳥 未来編』を少し思い出した)。

もしかしたら、我々の誰もが体験する生と死の仕組みはあの情景にあるのでは、と不思議な感動が劇場を出てから込み上げてきた。






ベスト10、本当に難しく、これ以降ご紹介する作品、どれが入ってもおかしくありませんでした。

というわけで順不同で一気に。



『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』

フレデリック・ワイズマン



『君の鳥はうたえる』

三宅唱



『運命は踊る』

サミュエル・マオズ



『ビューティフル・デイ』

リン・ラムジー



『こんな夜更けにバナナかよ』

前田哲



『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』

アンソニー・ルッソ、 ジョー・ルッソ



『スリー・ビルボード』



『菊とギロチン』

瀬々敬久


『search/サーチ』

アニーシュ・チャガンティ


『ラッカは静かに虐殺されている』

マシュー・ハイネマン



『君の名前で僕を呼んで』

ルカ・グァダニーノ



『レディ・プレイヤー1』

スティーブン・スピルバーグ



『ファントム・スレッド』

ポール・トーマス・アンダーソン



『RAW 少女のめざめ』

ジュリア・デュクルノー



『ナチュラルウーマン』

セバスティアン・レリオ



『素敵なダイナマイトスキャンダル』

冨永昌敬



『ヘレディタリー/ 継承』

アリ・アスター



『ローマ』

アルフォンソ・キュアロン


『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』

マイケル・ショウォルター


『ウインド・リバー』

テイラー・シェリダン


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