
毎年恒例の個人的年間映画ベスト。
①『チリの闘い』
ワンカット目から、1973年のチリにタイムスリップして放り込まれ、その熱狂にやられっぱなしの4時間半。
右とか左とか関係なく「いま」生きてる人、全員観るべき。
②『グランドフィナーレ』
邦題とポスターによって、老人の"グランドフィナーレ"を描いた映画、という印象を受けてしまうのが残念。
セレブしかいない人里離れた高級ホテルを舞台にした、原題通り「Youth」なクールでエネルギッシュな作品。
まずサンプルDVDで観たが、ちゃんとスクリーンで感じたくて、公開後劇場に観に行ったくらい人生の中でなかなか会えない傑作。
③『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』
1980年、大学入学直前の「狂乱の3日間」だけを切り取るってのがもう、最高!!
スクールカーストがどーしたとかヒエラルキーがどーのとかつまんない学園映画のお約束を一切描かないリンクレイター節、炸裂。
"アイツら"に会いに何度も観に行ってしまった。
④『LOVE 3D』
「精子が画面から飛び出してくる」というような過激なシーンばかり話題にされるが、これ以上ないくらい繊細な恋愛映画。
相変わらずギャスパー・ノエは、〈取り返しのつかない過去〉を浮遊させながら男女関係を描くのが上手い。
⑤『ボーダーライン』
メキシコ麻薬戦争をアメリカの視点から描いているが、それが途中で反転する構成が秀逸。
『ブレードランナー 2049』も期待の、絶好調監督ドゥニ・ヴィルヌーヴの光と闇を駆使した演出も冴えわたる。
ベネチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリンという2大顔面凶器俳優が共演、これだけでも野郎はグッとくるはず。笑
⑥『マジカルガール』
小さな偶然が積み重なり、交錯してしまったふたつの人生。
それぞれの「愛」がもたらす悲劇。
冒頭の長山洋子「春はSARASARA」はじめ独特のセンスが散りばめられた毒満載な愛の映画。
⑦『イレブンミニッツ』
同じ場所に居合わせた複数の登場人物それぞれの視点で描かれる「11分間」。
使い古された同時間群像劇と思ったら、まさかのオチがつく。
なぜ「11分間」かも含め、この作品の真意がわかった瞬間ニヤリとする。
イエジー・スコリモフスキ監督、78歳、まだまだ攻めるなぁ・・。
⑧『ズートピア』
擬人化された動物のキャラクターが活躍する子供向けのアニメ、という表面的なイメージを逆手に取ったシニカルでダークなスリラー。
メッセージ性の高いエンターテイメントとして設定がよく練られていて、緩急をつけたスリリングな演出と構成も素晴らしく最後まで目が離せない。
⑨『桜の樹の下』
ある団地を舞台にした老人たちの群像劇ドキュメント。
以前のブログに書いたのでこちらを読んでいただければと思います。
⑩『エヴォリューション』
上映終了後、たまたま隣りに座っていたベテランの評論家の方が「この映画、意味わかんないよ!」と激怒していた。大先輩に失礼かもしれないが、 なぜ「わからない」=「ダメな映画」なのかが理解できなかった。
この作品はメタファーを散りばめているのではなく、おそらく監督のルシール自身が見た「悪夢」の記憶で構築されている。夢は辻褄が合わない。だから“わからない”。そしてメッセージもない。
この極上の「わからない映画」は観る者それぞれの潜在意識を刺激し、独自の想像をさせ、それが監督自身の「悪夢」と相まって唯一無二の物語を生み出す特殊な作品だ。
私は私なりに生み出された物語を大いに楽しんだ。
次点
『クリード』
これを観て燃えない男は「漢」じゃない!
予告編だけで泣けてくる。。
ロッキーは永遠だ!
『カルテルランド』
調べれば調べるほど闇が深いメキシコの麻薬カルテル問題。
カルテル、そしてそれに対抗する市民を描いたドキュメンタリーだが、正義と悪の境目が曖昧になっていく過程を浮き彫りにした映画でもある。
⑤で選んだ『ボーダーライン』の前後に観るとさらに面白い。
『変態だ』
公開したばかりだが、すでにカルト。
しかし、実はカルトの皮をかぶって巧妙に計算し、観客を出し抜いている文学的傑作。
安齋肇さんの内面に存在する底知れぬ怪物性、それが静かに爆発している。
安齋さんのことを、「空耳アワー」でタモさんの横にいるおじさん、というイメージの人ほど観てほしい。
『もしも建物が話せたら』
ヴェンダース、レッドフォードなど著名な監督がそれぞれの好きな建物をチョイスし描くオムニバス映画。
6つの「建物」たちが、“自ら”の視点で“自ら”のことをそれぞれ饒舌に、または詩的に語り、問いを投げかけてくる。それは、実際にその場にいる以上に “存在”が伝わってくるような既視感を超えた「体験」だった。
『アイアムアヒーロー』
近年ゾンビものが多すぎて食傷気味だったが、本作は無駄のない展開、魅力的なキャラクターが相まって見事に「現実と地続きにあるゾンビのいる世界」を創り出している。
アクション映画としても現段階の邦画最高峰だと思う。
『サウルの息子』
1944年、アウシュヴィッツ。ゾルダーコマンダーとしてガス室で殺された同胞の死体を処理し続ける囚人サウルのある「一日半」を描く。
基本手持ちのワンシーンワンカット、ほとんどサウルの真後ろにぴったりと寄り添うカメラアングル。そのため凄惨な現場の様子はチラチラと垣間見ることしかできない。しかし、その(サウルの視点に近い)チラ見せのリアリティによって観客は実際にその場にいる錯覚に陥り、彼の生き地獄を”目撃”し続けざるを得ない。
『セーラー服と機関銃』
伝説の作品リブートだが、まさかの和製『ダークナイト』的映画だった。
前田弘二監督のこれまでの軌跡を知っていればより楽しめる。