今年4月に幕張メッセで開催された「オートモビル カウンシル 2026」。実際に販売されていたクルマを紹介する。まずはドイツ車を見ていこう。
ポルシェ 904-8(1964年)
今回のイベントで最も高額だったクルマ、ポルシェ904-8だ。
これはただの904ではない。世界に2台しか現存しない、1964年のル・マン24時間レースに参戦したワークスマシンのうちの1台である。もう1台はポルシェミュージアムに保存されている。
この車両は動態保存されており、実際に鈴鹿サーキットなどで走行しているという。エンジンはF1由来の空冷水平対向8気筒を搭載。その独特の冷却システムこそ、このクルマが純粋なレーシングマシンであることの証左だ。
今回のイベントに展示された車両の中でも、間違いなく別格の存在と言える1台である。
メルセデス・ベンツ 280SL(R107)(1986年)
1971年から1989年まで、実に18年間にわたって生産されたロングセラーモデルである。500SLなどのV8モデルに人気が集中しているため、この280SLはどちらかと言えばダークホース的な存在だ。
搭載されるエンジンは2.8L直列6気筒で最高出力185PS。組み合わされるトランスミッションは4速ATである。V8モデルに比べてエンジンが軽いため、ハンドリングは軽快で、上品なフィーリングが味わえる。
ハードトップ装着時に美しいラインを描くパゴダルーフも魅力のひとつだ。その優雅な佇まいは、現代のクルマにはない気品を感じさせる。
フィアット ディーノ スパイダー2.0(1969年)
さて、ここからはイタリア車を見ていこう。
1960年代後半、フェラーリはF2レース参戦のため、一定数以上のエンジンを市販車に搭載して生産する必要があった。そこで同じグループだったフィアットに協力を依頼し、誕生したのがフィアット「ディーノ」である。
「ディーノ」と言うと、一般的にはミッドエンジンのフェラーリを連想する人が多いだろう。しかし、エンジンそのものの基本設計は共通している。ただし、フェラーリ・ディーノがミッドエンジンレイアウトであるのに対し、こちらはフロントエンジンとなる。
車重はオープンモデルながら1,150kgと軽量。これを5速MTで操れば、官能的なエンジンサウンドも相まって、快楽以外の何物でもないだろう。
ランチア・テーマ8.32(1993年)
筆者が今回、最も心を動かされたクルマだ。
高級セダンであるテーマのボディに、フェラーリ製3.0L V8・32バルブエンジンを搭載。最高出力は215PS、5速マニュアルトランスミッションを備え、駆動方式はFFである。
トランクに備わる電動格納式リアスポイラーが、このクルマがただものではないことを雄弁に物語っている。
低速では上質な高級セダン。しかし、ひとたびアクセルを踏み込めば、フェラーリ由来のサウンドが炸裂し、その姿はスポーツカーへと変貌する。
とても手のかかりそうなクルマであることは想像に難くない。しかし、それを差し引いてもなお、このクルマの価値はあり余るほど大きい。いや、むしろ多少の苦労さえ、このクルマの魅力の一部なのかもしれない。
MG A 1600 Mk1 ロードスター(1959年)
さて、最後はイギリス車だ。
ビンテージ・ライトウェイトスポーツカーの代表格、MGAである。
搭載される1.6L直列4気筒OHVエンジンは80PSを発生。現在の交通事情に合わせ、トランスミッションは5速MTへ換装されている。
素直なハンドリングに加え、車重は940kgと軽量。そのため、現代の道路環境でも十分にスポーツドライビングを楽しむことができる。
速さを競うクルマではない。しかし、クルマを操る楽しさを存分に味わわせてくれる、まさに「Fun to Drive」な一台である。
ロータス ヨーロッパ S2 タイプ65(1970年)
「サーキットの狼」と言えば、やはりロータスヨーロッパだろう。優れた運動性能で大排気量エンジン車を峠で抜き去っていく姿は、多くのクルマ好きの憧れであり、筆者にとっても憧れの一台である。
ミッドに搭載されるエンジンは1.6L直列4気筒OHVで、最高出力は80PS。FRP製ボディを採用し、車重660kgという超軽量を実現している。
この個体はレース専用モデルである47GT仕様となっており、フルバケットシートに4点式シートベルトを装備。さらにマフラーには、J-WOLF製のワンオフマフラーが装着されている。ビンテージカー価格が高騰を続ける昨今、この価格はまさにバーゲンプライスと言えるだろう。
レンジローバー クラシック(1996年)
SUVの元祖、いわゆるクラシックモデルと言われるレンジローバーである。
どんな道でも走破できるフルタイム4WD。このクルマにスペックを語ることはあまり意味がない。当時、このクルマを表現する言葉として使われた「砂漠のロールス・ロイス」。その一言ですべてを語り尽くしている。
クラシックレンジの価格は近年大きく高騰しているが、この個体の価格は非常に良心的に感じられた。
ロールス・ロイス シルバークラウドⅢ フライングスパー
by マリナー・パークウォード
イギリスを代表する高級車、ロールス・ロイスである。
フライングスパーという名が示す通り、このクルマは特別なロールスだ。ボディは名門コーチビルダー、マリナー・パークウォードが手掛けており、低いルーフラインやシャープなリアピラーなど、標準車とは一線を画す優雅な仕立てとなっている。
このクルマにエンジンスペックを語るのは野暮というものだ。ロールス・ロイスがかつて用いた「必要にして十分」という表現こそが、もっともふさわしい。
会場では、ある著名人がこのクルマを真剣な眼差しで眺めていた。その姿が、このロールス・ロイスの持つ特別な魅力を物語っているようで印象的だった。
クルマが持つ時代性とカルチャーを伝える
さて、あなたの心に響く一台は見つかっただろうか。残念ながら、本記事をお読みいただく頃には、お目当てのクルマが新たなオーナーのもとへ旅立っているかもしれない。しかし、それもまた一期一会である。今回ご紹介したクルマたちが、次に出会う一台を探す際の参考になれば幸いだ。
オートモビルカウンシルは、今や単なる自動車イベントの枠を超え、確固たる地位を築いている。そこに並ぶのはクルマという工業製品だけではない。その時代の文化や思想、そして人々の憧れまでもが展示されているのである。
会場を歩けば、かつて憧れた名車との再会があり、知らなかった名車との出会いがある。オートモビルカウンシルは、まさにクルマ文化の発信地と言ってよいだろう。
これからも、この素晴らしい文化が末永く受け継がれ、多くの人々の心を動かし続けることを願ってやまない。
オートモビル カウンシル 2026
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