【ベントレーのデザイン】なぜいまスポーティ路線なのか。「スーパースポーツ」に見る、その歴史と新たな方向性

  • 文:小川フミオ
  • 写真:Bentley Motors
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英国のプレミアム自動車ブランド、ベントレーのデザインが秀逸だ。従来は大型セダン中心だったラインナップを、よりスポーティな路線へと変更中。興味深いデザインが出てきている。 

ベントレーのDNAに見出す「スーパースポーツ」

ベントレー スーパースポーツ
スーパースポーツは4リッターV8エンジンに(あえて)後輪駆動システムを組み合わせた2人乗り

代表例が、25年11月に発表された「スーパースポーツ」。大排気量エンジンと、パワフルな動力性能を、端的に表現したデザインだ。

ベントレーのデザインを“セルティック”と表現する向きがある。日本語だとケルト(人)の意で、スコットランドのエディンバラなどで見られる荒々しい岩山を彷彿させるというのだ。 

ベントレー スーパースポーツ リア
コンチネンタルGT史上もっともアグレッシブなエクステリアとされるスーパースポーツは500台限定。

それをやや強引にベントレー車のデザインDNAとすると、各国出身の優秀なデザイナーたちもよく理解しているようだ。

衝撃的だったコンチネンタルGT第1世代のデザイナーはベルギー人だし、美しいデザインで話題を呼んだ「バトゥア」(22年)を手掛けたのはドイツ人だ。

ベントレー バトゥア・コンバーチブル
英国ベントレー本社近くのショールームに飾れているバトゥア・コンバーチブル。写真:筆者

先代のデザインヘッドは、やはりドイツ人のトビアス・シュールマン。彼がポルシェのデザイン統括に就任したのち、23年9月から、英国人のロビン・ペイジが後を襲った。

ロビン・ペイジ

ディレクターオブデザインのロビン・ペイジは2001年から13年にかけてベントレーでインテリアデザインを担当し、そのあとボルボを経て、2023年よりベントレーに戻った。

デザイナーが交替していくのは、自動車界の常だが、大事なことはブランドDNAを守っていくことだ。

100年の歴史を受け継ぐスポーツカー

その点でいい例は、25年11月に発表された「スーパースポーツ」だ。

ベントレー スーパースポーツ インテリア
スーパースポーツのインテリア。

車名は、1925年(101年前!)にベントレーが手がけた3リッター車と同じものだ。時速100マイル(約160キロ)を超えた最初のベントレーと言われている。

最新のスーパースポーツは、490kW(666ps)の4リッターV8エンジン搭載。ボディは空力パーツで“武装”され、最高速は310キロ。静止から時速100キロまでの加速はわずか3.7秒だ。

コンチネンタルGTは2003年に登場した第1世代以降、24年の現行世代まで、全輪駆動システムを備えてきた。

それに対して、スーパースポーツはあえて後輪駆動というのも、伝統的なスポーツカーを好む層から高く評価されているようだ。

「ベントレーは常にドライバーのためのブランドです」

そう語るのは、2024年からベントレーモーターズのCEOを務めているドクター・フランク=シュテフェン・ヴァリザー。私は26年5月に、ベントレーの製品戦略について英国でインタビューした。

ドクター・フランク=シュテフェン・ヴァリザー
ベントレーモーターズのCEOを務めているドクター・フランク=シュテフェン・ヴァリザー。写真:筆者

「ベントレーはオープンマインデッドな企業文化を持っていて、私が『2座で、全輪駆動でなくて(後輪駆動で)、パワーを上げて、軽量化して、プラグインハイブリッドもなし』という新車の提案をしたときに、聞き入れてくれました」

このCEOは、ポルシェの技術畑で業績を上げてきた人で、ドクターの称号は工学博士だろう。

スーパースポーツの特徴は一目瞭然。ひと言でいうと、パワーの表現にある。レースカー的な前後のスポイラーと、側面のスカート。フェンダーは大きく膨らんでいて、22インチ径のロードホイールと組み合わされた大径・扁平タイヤを収めている。

レースの記憶を宿す「8」の意味

ベントレー スーパースポーツ フロントグリル
フロントグリルが印象的なスーパースポーツ。

もうひとつ、外観のデザインで目をひくのは、グラフィックス。網目のラジエターグリルに大きく数字が描かれている。ここは、1920年代から30年代のレースでは、ゼッケンを表示する場所だった。

今回のスーパースポーツの「8」番は、歴史的意味のある数字だ。1920年代から30年代にかけてのベントレー・レーサー(レースカー)でゼッケン8の車体はいくつも存在する。

1923年にベントレーは8番の「3リッター」(車名)でルマン24時間レースに参戦。燃料タンクに穴が開いていたものの4位入賞を果たした。

ベントレー・3リッター
1924年のルマン24時間レースで走ったベントレー・3リッター。

その後、27年に「3リッタースポーツ」で、28年は「4.5リッター」で、29年と30年は「スピードシックス」で、ベントレーはルマンで優勝。

時代は降って、2003年のルマン24時間レースで優勝したベントレー「スピード8」も、ゼッケンは「8」だった。ラッキーナンバーだ。

これは他メーカーではなかなかマネできない。レース活動に熱心に取り組んでいたベントレーだからこそのヘリティッジといえる。

スポーティさとエレガンス、その両立へ

「ベントレーのなかでも、いま特に人気が高いのはスポーティなモデルで、製品がよければ価格は問題視されていません。故にスーパースポーツは大いに期待できるプロダクトです」

ドクター・ウォリザーは言う。だからこそベントレー車のデザインは、スポーティな方向へと進んでいくことが期待できる。ただしエレガンスは忘れられていない。 

ベントレー EXP15
EXP15はBEVのコンセプトだがベントレーではラインナップをフル電動化する目標を明確化していない。

バトゥアや、25年7月に公開されたピュアEVコンセプト「EXP15」などを見ていると、ベントレーがなにを大事にクルマづくりを続けていこうとしているか、強い意思が感じられる。 

ベントレーEXP15
25年の米西海岸モンタレーカーウィークで一般公開されたEXP15。

まもなく発表と噂される新型SUV「バーナート」(仮称)も楽しみだ。

ベントレー モーターズ

www.bentleymotors.com/jp/ja.html

小川フミオ

モータージャーナリスト

自動車を中心に活躍するジャーナリスト/ライター。自動車誌やグルメ誌の編集長を務めた後、フリーランスとして活動。新車の試乗記をはじめ、グルメ、ホテル、人物インタビューなど、多岐にわたるジャンルの記事を独自の視点で執筆し、雑誌やウェブメディアを中心に寄稿している。

小川フミオ

モータージャーナリスト

自動車を中心に活躍するジャーナリスト/ライター。自動車誌やグルメ誌の編集長を務めた後、フリーランスとして活動。新車の試乗記をはじめ、グルメ、ホテル、人物インタビューなど、多岐にわたるジャンルの記事を独自の視点で執筆し、雑誌やウェブメディアを中心に寄稿している。