くるりの新作アルバムがリリース! 楽器、ボーカル、ビート編成…… 工夫が張り巡らされた“変奏”

  • 文:加藤一陽(編集者/ライター)
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【Penが選んだ、今月の音楽】
くるり『儚くも美しき12の変奏』

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1996年、立命館大学の音楽サークル「ロック・コミューン」にて結成される。古今東西のさまざまな音楽に影響されながら、旅を続けるロック・バンド。メンバーの幾度かの加入と脱退を経て、現在は岸田繁(ボーカル、ギター)、佐藤征史(ベース、ボーカル)の2名で活動中。

 くるりの約2年半ぶりとなるオリジナルアルバムは、“酔っ払っいがくだをまいて弾き語りをしている”ようなシチュエーションの弾き語りに多様なサウンドをコラージュ的に重ねることで、タイトル通り“儚くも美しき”雰囲気にまとめ上げた楽曲「たまにおもうこと」でスタート。そこからは、本編の幕開けを告げるようなワウフラッター(くるりが多用する電子音)が気分を盛り上げる畳野彩加(Homecomings)とのユニゾン曲「Regulus」、ナポリの音楽家ダニエレ・セーぺのサックスが情緒を深める「瀬戸の内」、同じくダニエレ・セーぺと制作した「La Palummella」、ヘヴィメタ風ギターが楽しい「C’est la vie」など、音楽ラバーズぶりが伝わる12の歌がまとめられている。

「金星」「oh my baby」は一聴するとシンプルに聴こえるタイプの楽曲だが、そのシンプルさ故に楽器、ボーカルアレンジ、演奏法、ビート編成など、構成要素それぞれに工夫が張り巡らされていることが直接的に伝わってくる。本作のタイトルを“変奏”とした意図の一端が垣間見えるようだ。加えて、岸田繁のボーカリストとしての幅の広さと変化をストレートに感じさせる点も聴きどころだろう。

 歌詞を際立たせるための歌唱、歌唱が立つためのコード進行、構成を重視したビート。そんなパズルをていねいに紡ぎつつ、キャッチーさまでもを意識してまとめ上げる仕事ぶりは、9月に30周年を迎えるベテランアーティストとしての矜持をも感じさせる。それでも、「昨今のJ-POPに一石を投じたい」というような説教じみたアティチュードでつくられた作品ではないことは明らかで、本質的にはやはりロック。こういった、つくり手の温度感がしっとりと伝わる作品に出合えたことが、なんとも懐かしくて嬉しい。

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