六甲山の空気とアートを楽しむ「六甲ミーツ・アート芸術散歩」開幕!

  • 写真&文:青野尚子

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「森の音ミュージアム」での明和電機の展示。巨大な自動演奏オルガンの演奏を制御するパンチカードを書き換え、オタマトーンなど明和電機の楽器と合奏させる。通常は明和電機のメンバーはいないのだが、内覧会時に機械の調整を兼ねてパフォーマンスを披露した。

明治維新で開港された神戸を望む六甲山は多くの外国人が住み、新旧の文化が出合う地だった。ここで開かれている『六甲ミーツ・アート芸術散歩』は今年で12回目になる芸術祭。六甲山と有馬温泉を中心に、招待と公募によって選ばれた30組あまりのアーティストが参加している。

明治から長い時間を経たいま、それぞれの時代に造られた建築物や場がアートとともに出迎える。淺井裕介・高山夏希・松井えり菜・村山悟郎らのアーティストユニット「パルナソスの池」は“廃墟の女王”との別名もある「旧摩耶観光ホテル」を"素材”にした。この廃ホテルとは別の、こちらも長い間使われていなかったゴルフ場のクラブハウスを舞台に、摩耶観光ホテルに残されていたものや彼らの作品がインスタレーションされている。雨漏りによる水でにじませたキャンバスや、一人が描いたキャンバスの上に他のアーティストが描いたりと制作過程は独特だ。

会場のひとつ、通常は非公開の「風の教会」は安藤忠雄の設計によるもの。ここで束芋は映像による“天井画”を描いた。打ち放しコンクリートの天井に教会内の空間が鏡写しのようになったり、脳や雲のようなイメージが現れる。空間が拡張されたような不思議な光景だ。この作品は束芋にとって、2019年4月以来の新作となる。

岩谷雪子が窓辺に置いたグラスの中には植物の小さな種が入っている。日が当たると種が飛び出す。温まると乾燥し、種の中にあるばねのような器官が伸縮してジャンプするのだ。岩谷は六甲で採集した植物を工芸のような手さばきでその美しさを引き出す。

この芸術祭には他に髙橋匡太、明和電機、松田美由紀らが参加、休止されたケーブルカーの駅や「ROKKO森の音ミュージアム」、「六甲高山植物園」などの会場で作品を展示している。秋の一日、港を見下ろす六甲山でアートの散歩が楽しめる。

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束芋の作品『オクユク』。安藤忠雄の空間を映像によって拡張する。

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岩谷雪子『みんな違う』。小さな種にひそむ形と動きの神秘。

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『パルナソスの池』の展示。廃墟から取り出したものと作品とが渾然一体となってカオスな空間をつくり出す。

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『六甲ミーツ・アート 芸術散歩 2021』

開催期間:2021年9月11日(土)~11月23日(火・祝)
開催場所:六甲山周辺各所
TEL:なし
開催時間:10時~17時 ※会場により17時以降も鑑賞できる作品あり
休館日:無休 ※ただし六甲山サイレンスリゾートのみ、9月13日(月)、27日(月)、10月の毎週月曜休
入場料:一般¥ 2,200〜2,500
※臨時休館や展覧会会期の変更、また入場制限などが行われる場合があります。事前にお確かめください。
https://www.rokkosan.com/art2021