真夏に聴きたいネオ・シティポップガイド Vol.1

  • 文:松永尚久

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1970年代〜80年代発のシティポップが再評価される昨今。その流れを紡ぎ、2010年代以降の風景を鮮やかに描く新世代をピックアップ。全3回にわたって紹介する。

cero ──時代の輝きを鮮やかに切り取り、シティポップ・シーンを牽引

セロ●メンバーは、髙城晶平(Vo、G&ute)、荒内佑(key、 sampler&Cho)、橋本翼(G&Cho)。2004年結成。最新作は、20年2月発表のシングル「Fdf」。

メンバーそれぞれが作曲やアレンジ、プロデュースを手がけ、ヒップホップからトライバル・ビートまで、楽曲ごとに異なる音色や風景を描く。固定された音楽世界を持たないバンドがセロだ。時代の先端にある輝きを切り取ったような音をつくり続ける彼ら。

2015年に発表したアルバム『Obscure Ride』では、メロディアスなブラック・ミュージックの要素を取り入れ、見慣れた景色を色鮮やかに変える完成度の高いグルーヴを表現。この作品をきっかけに、現代のシティポップが注目されるようになったともいわれている。

しかし彼らはその世界に固執することなく、軽やかにサウンドを進化させ、新たな時代の音を生み出し続ける。

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「Fdf」cero カクバリズム /SPACE SHOWER MUSIC 配信限定

SIRUP ──歌とラップを自由に生き交い、現代の都市がはらむ空気を表現

シラップ●1987年、大阪府生まれ。2017年にEP『Synapse』でデビュー。翌年発表の「Do Well」がCMソングに起用され話題に。今年3月に2ndフル・アルバム『cure』をリリース。

歌(シング)とラップを自由に行き交うボーカル・スタイルから名付けられたというアーティスト、シラップ。

新進気鋭のクリエイターたちと繰り広げるサウンドは、ソウルやヒップホップ、エレクトロなど多様性にあふれたもの。さまざまな感性や嗜好が認められる現代の都市だからこそ生み出せる空気感を、楽曲に閉じ込めている。

その根底には人々の心の動きに寄り添うメロディーがちりばめられており、実験性とポップ性との融和が1980年代の楽曲スタイルにも通じる。

【SIRUP登場】Pen+『1冊まるごと、アディダス』

『cure』SIRUP RZCB-87050 A.S.A.B/エイベックス ¥3,080

Nulbarich ──ブラック・ミュージックを軸に、東京の輝きをメロディアスに歌う

ナルバリッチ●シンガー・ソングライターのJQがトータルプロデュースするバンド。2016年に初のアルバム『GUESS WHO?』をリリース。今年1月にはシングル「TOKYO」を配信。東京の景色をロマンティックに表現している。

生楽器、もしくはそれらをサンプリングしたサウンドを駆使。中心人物であるJQの日本語と英語を流麗にミックスさせたボーカルで、洋邦問わず幅広いリスナーから支持されるバンドが、ナルバリッチ。

ブラック・ミュージックをベースにしながら口ずさみやすいメロディーを加え、現在の東京がもつ輝きを表現する楽曲が多い。「なにもないけど満たされる」という意のバンド名が示す通り、聴くものを豊かな気分にさせる。

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「TOKYO」Nulbarich ビクターエンタテインメント 配信限定