Pen編集者16名が初公開!我が愛読誌、教えます。

意外に思われるかもしれませんが、「ミセス」にぞっこんなのです。

ミセス

安藤 貴之

「編集長とかやってるんだから、当たり前じゃないの?」と厳しい突っ込みを入れられそうですが、とにかく雑誌を読むのが好きです。仕事でもプライベートでも、雑誌が生活の中心にあります。好きなレコードをかけて雑誌をペラペラとめくるのが至福の瞬間だった、10代の頃からほとんど変わっていません。

このオンライン短期集中連載の担当編集者から、愛読誌について書けといわれてすぐに思いついたのは、ライバル誌として比較されることの多い「ブルータス」。いまの雑誌業界を代表する編集長である西田善太さんがつくりあげる軽妙洒脱な誌面には、触発されずにはいられません。ブルータス以外にも、最近は建築ネタだけでなくオールラウンドな特集が楽しい「カーサブルータス」や、独自路線を突っ走るファッション誌『センス』もよく読むし、「週刊ダイヤモンド」や「東洋経済」といったビジネス誌、アートなら「芸術新潮」、スポーツ誌は「ナンバー」を愛読している……と得意満面に話したところ、担当のSから「ふつうですね。もっと本気を出してください」とまさかのダメ出し。そんなわけで、とっておきのネタを披露することにしました。

ひとりの雑誌編集者として、ずっと意識している女性誌があります。文化出版局から刊行されている、いわゆる“婦人誌”の「ミセス」です。1960年代はじめの創刊とのことですから、世に出て半世紀! 老舗中の老舗といえます。ある程度のシニア層を読者としているはずだし、誌名から「コンサバ」なイメージが強い人も多いかと思います。ところが――です。フィガロジャポンやヴォーグのようなバリバリのモード誌というわけではないのに、実はファッションページのクオリティが非常に高い。とくにモデルカットはシンプルながら比類なきクリエイション。コンサバすぎず、エッジィすぎず。クラシックな洗練さの一方で、先端モードのキレもある。一枚の写真の中に、リアルな親しみやすさと、研ぎ澄まされた緊張感が同居しています。

とはいえ、ほかの雑誌には出ないモデルが登場しているとか、個性的なスタイリングで勝負しているわけではない。なのに、ひと目で「ミセス」だとわかる。それが雑誌の醸し出す「佇まい」というべきものなのです。モデルの美しさだけでも、写真家の表現力だけでも、またエディトリアル・デザインのチカラだけでも表現できない「何か」が香り立ってきます。

そんな佇まいこそが、雑誌の不思議さ、面白さ、奥深さ……と、書いているうちに、またまた雑誌が好きになっていくのでした。
ミセス

最新号のファッションページから。「グッチ」(右ページ)や「ランバン」といったハイブランドを、日本人モデルで上品かつモードな手法を駆使して表現。「ミセス」ならではの上質な抜け感がいい。(表紙・誌面写真:青野豊)

ミセス
文化出版局
毎月7日発売
¥1,132
1961年創刊
編集長:落合 眞由美