Pen編集者16名が初公開!我が愛読誌、教えます。

男の本能を刺激する、モノ好きのための雑誌。

CLUTCH

多田 潤

「ラゲッジレーベル」の鞄、「バス」のローファー、「リーバイス501」、「アルファ」のA2ジジャケット、「ヘインズ」のTシャツ、「グローバーオール」のダッフルコート……。僕にとってこれらのアイテムは、甘酸っぱい思い出だったり、栄光の証だったりと、思い出がいっぱいのアイテム。

「ポパイ」「ホットドック・プレス」を欠かさず買い、そこから、定番と流行の違い、格好がいいもの悪いもの、そして簡単なコーディネート術を学びました。休みの日には、アメ横の専門店や、当時、原宿・渋谷に誕生したばかりのセレクトショップを訪れ、貯めたバイト代で、憧れのアイテムを手に入れたものです。でも、憧れのアイテムだけあって、なかなか手が届かないアイテムも多かった。

そんな時に裏技として利用していたのも雑誌でした。当時、日本にお店がなかったアメリカの「L.L.Bean」は、日本まで商品を送ってくれる貴重な通販雑誌。僕らにとってはレアなアイテムの宝庫で、しかも送料を入れても日本で買うより安かったので、夢中で英語を翻訳してオーダーしたものです。いま思えば、そんなモノ好きが高じて男性誌の編集者になったのかもしれません。

ここで取り上げる「クラッチ」はそんな時代を生きてきた男たちにもぐっとくる雑誌。最新号の巻頭には、男性誌の有名編集長が愛用する愛用靴(くたくたの靴ばかりで格好いい!)を特集したかと思えば、英国のヴィンテージカーの祭典、グッドウッド・リバイバルの取材記事、同じく英国ノーザンプトンにあるシューズメーカーの潜入記事など、モノ好きの男にとってまるでトンコツスープのような「濃さ」がたまりません。いまの時代、男性誌も薄味の上品なタイトルのものが増えてきたなかで、貴重な存在です。
CLUTCH

最新号では、自動車専門誌と違う切り口でクラシックカーの祭典「グッドウッド・リバイバル」も紹介。ヴィンテージの洋服やモノの記事が多いのも特徴です。(表紙・誌面写真:青野豊)

CLUTCH
枻出版
毎月24日発売
¥905
2012年創刊
編集長:松島 睦