Pen編集者16名が初公開!我が愛読誌、教えます。

本当はハナコ編集部で働きたかった。

BRUTUS

秋元 球利江

小学生の頃から読んでいた雑誌は「ハナコ」。だから大学生になったら、まずハナコ編集部でバイトしよう、そう決めていました。

アルバイト募集、なんてどこにも書いてないけど、コンビニで買った最新号のハナコの背表紙を見て、編集部に電話。なんというタイミング!! ちょうど学生アルバイトを募集しているというのでスグ履歴書を送ったのです。

……しかしそれは叶わぬ夢でした。どういうわけか、「ブルータス」に配属された私。(あぶれたのか?)ぶっちゃけ、一度も読んだことないけど大丈夫かな……男性誌だし……。不安な気持ちを抱きつつ、ハナコと同じ出版社だし、と軽い気持ちでバイトをスタートしました。

それから3年半、大学卒業までブルータスバイト生活は続きました。当時の面接官であり、バイト統括係の副編集長N氏から「ここで学べるものは何もないから」とはっきり言われたものの、振り返ってみると私にとっては発見の連続。300万円以上の時計を間近で見たり、超有名カメラマンに届けものをしたり、美味しいお取り寄せをつまんだり……なによりも、創刊号から最新号までブルータスが読み放題だったことが、“興味の対象”を広げてくれたような気がします。掲載されている男性向けアイテムは自分では買わないし、なんかよくわからないカルチャーページは読んでもやっぱりよくわからないし、ついでに編集部員もどこで仕事をしているのかよくわからないけれど……。「1つのテーマを独自の目線でとことん突き詰めて紹介する」。ありきたりなキャッチフレーズかもしれないけれど、女性誌しか読んでいなかったら知らなかった世界がここにはありました。次は何特集!?と不安にさせるほど自由自在に変わる特集と、海外最新情報、人間関係など安定の連載ページとのバランスにも、愛着が湧いてきたり。

もちろん、当時はただの学生バイトに過ぎなかったので楽しいことばかりではなく、副編集長のN氏には何度も怒られたりしました。(しかもなぜか逆ギレしたこともあったような……恐ろしい……)

そしてN氏は、私が卒業したあとブルータスの編集長に昇格されました。いまでもブルータスを読むと、N氏の顔が浮かんできます。怒っている顔も含めて。「何も学べるものはない」と言った西田さんですが、絶対そんなことはないと思います。だって男性誌の奥深さや面白さを教えてくれたのはあのバイトだったから。
BRUTUS
マガジンハウス
毎月1日・15日発売
¥650
1980年創刊
編集長:西田 善太