Pen編集者16名が初公開!我が愛読誌、教えます。

B5という小さい判型ながら、ラテンアメリカの凄みを感じさせてくれる貴重な「雑誌」。

中南米マガジン

井手 ゆい

15年ぐらい前、キューバとブラジルの音楽にはまっていた頃の週末は、ディスクユニオン新宿本館→カレーを食べて帰る、のが定番の過ごし方だった。「中南米マガジン」は、そのラテンフロアで出合ったと記憶している。カレーを食べつつ、B5判型の「中南米マガジン」をめくりつつ、こんな本で書けたらなと作文の下書きまでした(当時はPen編集部員じゃなかった)。でも、肝心の中南米諸国には訪れたことがなく、自主退却。巻末の振替用紙で定期購読の申し込みをするのが関の山だった。

なぜこんなに「中南米マガジン」が好きだったのか。それは街の情報あり、音楽あり、ボクシングあり、遺跡あり、「ラテンアメリカ」のつかみどころのない凄みを感じさせてくれる“雑誌”だからだ。創刊号の「ギアナ高地・ジャングルの巨穴」から始まり、「コロンビアゲリラのバトルロイヤル」「ハバナの読書界に異変」など、日本の新聞・雑誌にはまずない見出しが興奮させてくれた。特に、すずきさちさんの記事が好きで「ハバナのチャイナタウン」「ハバナのカメラ屋」は、女性にとっての「パリお買いもの完全マップ」くらい、私にはきらきらした記事だった。勝手に親近感を抱いたハバナのカメラ好き少年やカメラ屋のおじちゃんたちは、いまどうしているだろう。2001年9号を取り出したら、でびさんの漫画「グァテマラのホームステイ&スペイン語学校」の、現地滞在中によく人が死んだ話に付箋がついていた。13年前の私、それだけ面白かったということか。

最新号を見ると、毎号、誌上で売上や広告収入の報告をし、苦境を明らかにするのもどうやらずっと変わっていない。パラダイス山元さんの連載も続いている。「コロンビアの日系社会」「黄金の中南米ボクシング」と心躍る見出しも健在、河村三太夫さんの「漫画アチェーニがいく」が始まっていた。ペルーの空港でブラジル女性と寝袋で一晩を過ごした、旅するハナグマ、アチェーニ。これからどんな旅の話を聞かせてくれるのか。
久々に手にした最新号が2013年7月1日発行だったので問い合わせたら、単行本制作のため遅れているとのこと。次号は年明け1月頃、との回答がきてほっとした。ゆっくりでいい。中南米の雑誌が続いていることが、本当に嬉しい。
中南米マガジン

最新号26号の「漫画アチェーニがいく」。http://chuunanbei-magazine.netで購入可。(表紙・誌面写真:青野豊)

中南米マガジン
季刊
¥500
1997年創刊
編集長:金安 顕一