一生使える定番を、ひとつずつ集めていきたい。

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靴磨き
長谷川裕也

1984年、千葉県生まれ。20歳の時、独学で靴磨きをはじめる。2008年、東京・青山にBrift H(ブリフトアッシュ)をオープン。靴磨きのみならず、染め直しや革割れ補修など靴全般のケアを請け負い、一躍人気店に成長。まったく新しいイメージの靴磨き職人として、メディアでも引っ張りだこに。

靴を愛するジェントルマンが絶大な信頼を寄せる靴磨き職人、長谷川裕也さん。シューケアの作業中も、タイドアップしたジャケットスタイルを崩さない長谷川さんは、持ち物に対するこだわりを語ってくれました。
「靴もそうですが、家具でも、洋服でも、長年使って悪くなっていくものではなくて、さらに魅力が増していくものが好きです。そういう自分の定番みたいなものを増やしたい」
男の定番の例として、セルジュ・ゲンズブールの足元を飾ったレペットのシューズを引き合いに出した長谷川さんは、自身の定番品のひとつを紹介してくれました。
「いつも持ち歩いているノートです。一生使えるノートが欲しいと思い、蔵前にある文具店のカキモリでオーダーしました」。使い込まれたロウ引きのレザーが独特な風合いを醸し、靴磨き職人らしい味のある持ち物です。打ち合わせなどに行く時には、このノートだけを持って出かけるのだとか。荷物を最小限にすることも、ジェントルマンらしい心がけです。
「私のジェントルマンに対するイメージは、ユーモアがあって力が抜けている男性。頑張っていることをまわりに悟られない、そんな大人は魅力的ですね」

「ブリフト アッシュでオーダーノートのイベントを開催した際に、特別に手持ちのブライドルレザーを使ってノートをつくってもらいました。ペンはカランダッシュを使っています」。ロウ引きされたレザーも、使い込まれることで独特な飴色の風合いに変化しています。

カキモリのサービスでは名入れも行っているそうです。ダークブラウンのブライドルレザーに、ゴールドのエンボスがラグジュアリーな印象。

長谷川さんが選んだ紙は方眼のバンクペーパー。バンクペーパーとは、その名の通り銀行の帳簿用に漉かれたもの。カキモリのロゴがうっすらと見て取れます。「なめらかな書き心地が気に入っています」と長谷川さん。

「使っていくうちにレザーの角が潰れてきたので、アロンアルファを染み込ませて補強しました。自分なりにメンテナンスをすることで、ものに対する愛着も深まります」

「打ち合わせに出る時には、このように丸めて持っています」。レザーであれば丸めてもヨレることがありません。指に染み込んだシューズの染料が、職人の風格を漂わせています。