倉本 仁がひも解く、デザインの魅力とは。

プロフェッショナルの目に、Audi A5のデザインはどう映るのか。
気鋭のプロダクトデザイナーは、「内側から滲み出るもの」に注目した。

倉本 仁 Jin Kuramoto

プロダクトデザイナー
1976年生まれ。金沢美術工芸大学卒業後、家電メーカー勤務を経て、2008年にJIN KURAMOTO STUDIOを設立。家具、家電、アイウエアなどのデザインを国内外のクライアントに提供する。グッドデザイン賞審査員も務めている。

「アウディを見ていると、デザインはこんなことができるんだと感心します」
こう語るのは、家具や家電などジャンルにとらわれず幅広く手がける、プロダクトデザイナーの倉本仁さんだ。倉本さんは、アウディのデザインのどこに可能性を感じたのだろうか?
「1990年代後半に初代アウディ TTを見た時に、なにか新しいことを始めるというメッセージが伝わってきたんです。以来、デザインによってアウディのブランド価値は大きく上がりました。デザイナーとして、デザインがもつ力を改めて感じましたね」

デザインにおける、“うまみ”とはなにか。

新しいアウディ A5クーペと対面した倉本さんは、「面のうねりがきれいですね」という第一印象を残してから、デザインで気になる部分を語り始めた。
「普通は自動車の“顔”に目が行きがちですが、プロダクトデザイナーは面の構成を見ます。そういう目で見ると、マッシブな大きな塊があって、内側から外に向かって押し出す強い張りを感じます。そして、そこに稜線のようにラインが走ります」
そう言いながら、アウディ A5のデザイン的な特徴であるショルダーラインを倉本さんは手のひらでなぞる。
「面も線もごちゃごちゃしていなくて緻密です。お洒落という言葉を使うと簡単すぎますが、知的で上品に見えるのはそのあたりが理由でしょうね」

倉本さんの視線は、シャープなラインが刻まれたボンネットに移っていく。アウディが“パワードーム”と呼ぶボンネット上のふくらみを指差しながら、「いいものが詰まっている感じが伝わってきますよね」とうなずいた。
倉本さんのデザインは、CMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)を大事にしていることで知られる。モノの質感が人の感性に与える影響を重視しているのだ。そこで、自動車デザインにもCMFは関係するのかを尋ねた。
「もちろんです。自動車の場合はふたつの考え方があると思っています。ひとつはモノとしてどういう存在感を放つか。もうひとつは、周りの環境とどう馴染むか。わかりやすく言うと、都市が似合う車と、海沿いの道を流すと格好いい車とは違うと思うんです。アウディ A5の場合は、知的で上品という印象につながりますが、都市の景観に置くとハマるような気がします」

最後に倉本さんは、“うまみ”という興味深い言葉でデザインを語った。
「造形のうまみとかCMFのうまみとか、いい商品、いいデザインはきれいなだけでなく、内側から滲み出るうまみがあるんです。そしてうまみがあるデザインは、長く使っても色あせない。アウディ A5もきれいな形であると同時に、内側にあるハイテク性やパワー感が滲み出ていますね」
倉本流に言えば、アウディ A5はうまみがあるデザインなのだ。

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