“カイヤ”じゃないよ! トミーカイラはEVハードコア。高笑いを残しながら、追い越し車線を無音で駆け抜けちまう。

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    東京車日記いっそこのままクルマれたい!

    第25回 GLM Tommykaira ZZ/ジーエルエム トミーカイラ ジィージィー

    “カイヤ”じゃないよ! トミーカイラはEVハードコア。高笑いを残しながら、追い越し車線を無音で駆け抜けちまう。

    構成・文:青木雄介

    編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

    色んなスポーツカーのオマージュが感じられるこのデザインも悪くないんだけど、今後はEVをもっと感覚的にデザインする方向性を見たい。ものすごく新しい音楽演ってるのに、格好は往年のロックスターみたいなアンバランスな感じがもったいない!

    皆さんは知ってますか? GLMという日本のベンチャー企業を。10月1日から開催されるパリ・モーターショーではG4という4人乗りのEVによるスーパースポーツカーを発表し、EVの分野で先鋭的にスポーツ性能を追い求めている企業なんだ。今回はG4の前身となる、トミーカイラZZに乗る機会をひょんなことで得た訳。あまり知られていないのも無理はないんだな。トミーカイラZZは年間生産台数100台未満の車両認証制度を利用している、手作り感あふれるバックヤードビルダー車だからね。俺自身、最初は「EVのスポーツカーってどうよ!?」と懐疑的だった訳。ただの先入観なんだけどね。それが志半ばで販売中止になった、伝説の初代トミーカイラ(カタチは結構好きだった)の後継車種と聞いても、「EVか……」で「うむ」ぐらいの反応で終わっちゃってたんだな(笑)。


    しかし!  オーマイ・カイラ! マジかいや! 乗ってみるとこれがめちゃくちゃ熱いクルマだったって訳さ! あはははは。もう最高! まずドアはノブがないから内側に手を回して開けなきゃならないでしょ(笑)。フルバケットできっつきつだから乗りこむのも、いっそハンドル外したくなるレーシングカー並みの苦労ですよ。屋根なしサイドウィンドウなし、空調や音響の類は一切なし。ハンドルは重ステだし、ブレーキもブースターなしの生っぽい踏み心地! このないない尽くしはすべて軽量化のため。ミッドシップにマウントされたモーターの動力性能は305馬力あって415ニュートン(!)もあるんだけど、FRPで覆われたボディは850kgしかないから、トンでもない加速をするのよ! 弾丸みたいにズッキューーンって感じ(笑)。時速100キロまでの加速はたった3.9秒だよ。何だこれ! 超やばい。つまり「EVの異次元の加速を刺身で食べてください」ってことなんだな。アクセルのほんと繊細な踏み代がリニアに速度に直結する感じ。出力を一切、漏らさない感じ(笑)。何もかも置き去りにするこの感じは正直、俺がこれまで愛してきた至高の内燃機関たるオットーサイクルが、EVという新興勢力に「ダッセ」と言われた初めての経験だったな(笑)。


    そう感じたのは動力性能もさることながら、その可能性ですよ。これって要はバスタブ型のメインフレームにFRPをかぶせたゴーカートであり、GT-Rニスモの外側つけた子ども用の電気自動車とまったく同じ構造なんだ。かぶせるものは自由に変えれるようになるし、モーターの出力をあげればあげるほどどんどん速くなる訳で、ベース車両と外側につけるエクステリアパーツという両面で語るべき代物なんですよ。面白いでしょ!?  実際にこのクルマに乗って、航続距離だ、屋根だ、快適性能がどうのこうの言う人はいないと思う。刺身はどんなに美味くても、大量に食べるものじゃないのと一緒(笑)。ただ最強の刺身を「いつでも食べれる環境においとく」人生のために、このクルマはある。早晩、走り去るこんな感じのEVスポーツカーの車両を見て「あの刺身また食べたいなぁ」と思わされる日が必ず来るって気がしたよ、ほんと。

    GLM Tommykaira ZZ /ジーエルエム トミーカイラ ジィージィー

    ●バッテリー:リチウムイオン
    ●出力:305PS
    ●トルク:415Nm
    ●トランスミッション:1速固定
    ●車両価格:¥8,640,000

    問い合わせ先/GLM 
    TEL:0774-39-8822
    http://tommykairazz.com/