家具のように美しく佇む、小ぶりな冷蔵庫。

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    青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

    家具のように美しく佇む、小ぶりな冷蔵庫。

    ガラス仕上げの扉と、限りなくスクエアなフォルムがミニマルで美しい。実勢価格¥70,200

    この10年、どのメーカーも冷蔵庫の大型化に力を注いできた。省エネ性も使い勝手も、デザインの美しさも大型冷蔵庫が優先され、ひとり暮らしや少人数世帯向けの小型タイプは蔑ろに。というのも、小型冷蔵庫は大学への入学や就職など、いわゆる〝ファーストシングル〞がターゲットだったから。価格優先、冷えればいい、そんなとりあえずの冷蔵庫ばかりが店頭に並んでいたのだ。 

    そこに異議あり!と果敢に攻め込んだのが、シャープの小型冷蔵庫SJ -GD14Cだ。「目指したのは、家具のように部屋にマッチする形」と、同社健康・環境システム事業本部デザインスタジオの一色純氏は語る。単に食材を保管するモノではなく、空間の質を高める家具のような佇まいにしたかったのだ、と。 

    1枚の板をモチーフにした冷蔵室の扉と、シルバーのラインが印象的な冷凍庫で構成された、限りなくスクエアなフォルムは、艶やかなガラス面を際立たせていて美しい。これらを実現するため、冷蔵室の扉にはハンドルを付けない、冷凍庫のシルバーの取っ手は手を添えた時の引き出しやすさを考慮した上で限界まで薄くする、など開発にあたっては苦労が多かったと聞く。 

    ちょうど目線の高さに位置する天面も、通常の冷蔵庫にあるような凹凸感はなくフラットだから、お気に入りのグラスを置いたり、写真を飾ったりというような使い方もできる。これもドア上端の厚みを薄くし、トップテーブルを手前端まで伸ばす設計にしたから実現できたこと。ワンルームなどキッチンやダイニングスペースと居住空間が一体になった部屋に住む人が多い、ひとり暮らしの人への配慮にあふれているのだ。 

    赤みを加えて落ち着きを出したピュアブラック、パール感のあるクリアホワイト、品のあるメタリックベージュと、3色のカラーもそれぞれこだわりを見せている。特にピュアブラックは男性にお薦めしたい一台。同社のコンパクトタイプのウォーターオーブン「ヘルシオ」のブラックモデルを上に置くと、まるで一体化した製品のように見えるほどシックにまとまるのも素晴らしい。 

    冷蔵室を開けると目に入るのは、ガラス棚の縁のシルバーのラインとグレーの背面パネルで、上質感のある印象。野菜やちょっとした惣菜、チーズなどを入れておける透明ケースも便利そうだ。プラズマクラスターで冷蔵庫内を清潔に保ってくれるのもうれしい。ちなみに、引っ越し先の設置位置に応じて左右どちら開きにもできる同社独自の〝つけかえどっちもドア〞構造も、ガラスドアになっても採用。初めてひとり暮らしをする人も、そろそろ買い替えを考えている人も、2台目冷蔵庫が欲しいという人にも、こんな〝大人の冷蔵庫〞はどうだろう。

    ドア上端の厚みを薄くし、天面を手前端まで伸ばす設計にすることで、潔いくらいフラットな仕上がりに。

    神原サリー
    新聞社勤務を経て「家電コンシェルジュ」として独立。豊富な知識と積極的な取材をもとに、独自の視点で情報を発信している。2016年、広尾に「家電アトリエ」を開設。テレビ出演や執筆、コンサルティングなど幅広く活躍中。
    ※Pen本誌より転載