好みの献立もお見通しの、会話上手なレンジ

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    青野 豊・写真photograph by Yutaka Aono

    好みの献立もお見通しの、会話上手なレンジ

    人工知能搭載によるオーブンレンジは、料理の幅を格段に広げてくれる。実勢価格¥192,240

    ついに調理家電にも、人工知能(AI)が搭載される時代がやってきた。シャープから発売されたウォーターオーブン「ヘルシオ」の2016年モデルでは、音声で会話することで献立の相談ができるという新たな切り口が加わったのだ。

    シャープの音声認識による会話ができる家電といえば、12年に発売されたロボット掃除機「ココロボ」に端を発する。この時には認識させるための言葉もごく限られたもので、決められた言葉から少しでも外れると認識せず、なんのやり取りもできないことがあったほどだから隔世の感がある。4年の歳月を経て、人工知能とIoTとが合体した「A IoT」により、ここまでたどり着いたのはとても喜ばしい。

    毎日の料理で最も悩ましいのが献立を決めること。冷蔵庫にある食材を上手に使って、栄養のバランスが取れたおいしい料理を日々つくることは、なかなか難しい。このヘルシオは「今晩、何つくろう?」というような漠然とした問いかけに対しても、その日の天気や家族の好み、季節の行事に合わせたお薦めメニューを提案してくれる。クラウドと連携しているから可能な天気との連携だけでなく、これまでにつくったことのあるメニューから家族の好みを学習し、喜ばれそうなものを提案することも。時には「肉料理が続いているから、今日は魚料理はどうですか?」といった気遣いもしてくれるから頼もしい。 

    目標カロリーを指定したり、高血圧向けのメニューを相談したりと、より健康管理に特化した献立相談も可能。まるで専任の管理栄養士が傍にいてくれるような安心感だ。材料や味付けなどの詳細は、本体でメニューを決定すると専用アプリ「COCOROKITCHEN」に送信されるため、手元のスマートフォンで確認できるのも便利だ。 

    とはいえ、提案するメニューのつくり方が煩雑だったり、材料の分量を細かく計ったりしなくてはならないのでは、ヘルシオで調理をするのが面倒になってしまう。ここで光るのが昨年モデルから搭載された「まかせて調理」機能。冷凍・冷蔵・常温が混在した食材でも同時に調理でき、分量にとらわれず、すべておまかせでOK。過熱水蒸気だけで調理をするウォーターオーブンだからこそ可能にしたこの調理方法で、調理のハードルを一気に下げて圧倒的に使いやすくしたのだ。 

    献立相談したメニューを誰でも簡単に調理できることに加え、クラウド連携でハードを買い替えなくともメニューがどんどん増えていくという楽しさ。今後、我が家のヘルシオはAIの学習機能によってどのように変化していくのだろう。まるで家族のような愛着を感じさせる、新しい調理家電だ。

    液晶操作部は、スマホがそのままレンジに付いたかのよう。話しかけるとレシピが表示されるなど、音声での操作も可。

    神原サリー
    新聞社勤務を経て「家電コンシェルジュ」として独立。豊富な知識と積極的な取材をもとに、独自の視点で情報を発信している。2016年、広尾に「家電アトリエ」を開設。テレビ出演や執筆、コンサルティングなど幅広く活躍中。
    ※Pen本誌より転載