伝説の系譜を受け継ぐ、独創的ダイバーズが誕生。

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    FAVRE-LEUBAファーブル・ルーバ

    伝説の系譜を受け継ぐ、独創的ダイバーズが誕生。

    岩崎 寛(STASH)・写真 photographs by Hiroshi Iwasaki
    並木浩一・文 text by Koichi Namiki

    魅力的なブランドが、腕時計のフロントラインに帰還した。久しぶりの日本再上陸を果たしたのは、スイスきっての老舗ファーブル・ルーバ。旗艦モデル的な存在の「ハープーン」は、異色のクールさを見せるタフなダイバーズ・ウォッチである。 

    ケースからして、すぐに目を惹く。極上の60年代デザインを彷彿とさせるような、肉厚なクッションシェイプのケース。陽極酸化処理(アルマイト加工)を施したベゼルの色と艶、文字盤の深いブルー、発光アプライド・インデックス。すべての形と仕上げが、実に明快である。その一方で、表示形式は特許を取得したきわめてユニークなテクノロジー。時刻表示と連動した分針を、回転するアワー表示のディスクが追いかける。複雑な機構だが、時分は常に一目瞭然だ。酸素の残量を測る分表示が何よりも大切なダイバーズのために、その一点にアテンションを集中させる新機軸。奇をてらったのではなく極限まで考え抜いた末の終局的な表示機能は、ほとんど複雑機構のレベルに達した傑作である。その一本の針を象徴するかのような、クジラも射抜くモリの意味をもつ「ハープーン」のネーミングも秀逸である。文字盤カラーは、ブルーのほかにスパイシーなオレンジを挿し色に利かせたブラックが用意されていて、メタルブレスの設定もあり、全4型。  

    そもそもファーブル・ルーバといえば、1737年にル・ロックルに創業したという、伝説的な時計メーカーである。バーゼルワールドの常連であり、日本へのディストリビューションも行われていた。その名を懐かしむオールドファンも少なくないだろう。「ハープーン」は、前身モデルが60年代に遡る大看板である。ブランドとスタイルはクオーツ・クライシスの中で減速していったのだが、世界的な機械式腕時計ブームが華麗な復活を可能にした。その潮流を支えた一大勢力である日本のファンの前に、ファーブル・ルーバは戻ってきたのである。

    ハープーン

    ●自動巻き、ステンレス・スチール、ケース径46㎜、分針とアワーリングによる時刻表示、秒表示ディスク、ヘリウムエスケープバルブ、 ねじ込み式リューズ、ブルー発光のアプライド・インデックス、ラバーストラップ、500m防水。¥534,600
    ●問い合わせ先/スイスプライムブランズ TEL 03-4360-8669
    ※Pen 2017年1月1・15日号に掲載