コーヒー好きなら、次に目指すは自宅焙煎!

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    青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

    コーヒー好きなら、次に目指すは自宅焙煎!

    焙煎機本体(¥108,000)の購入に加えて、毎月豆が届くサービス(¥4,104~/月)へ加入する仕組み。

    コーヒーは早くもサードウェーブを越えて、次の波が来たらしい。新しいコーヒーの波とは、ずばり「自家焙煎」。焙煎とは、浅煎りから深煎りまで焙煎度の強さだけに注力するものではなく、豆の特徴を見極め、つくりたいコーヒーをイメージして、その味が出せるように〝デザイン〞するという唯一無二のもので、非常に奥が深い。パナソニックが4月から開始したコーヒーサービス事業「ザ・ロースト」は、コーヒー焙煎機と専用の豆――もちろん生産者の顔が見える100%シングルオリジンのスペシャルティコーヒーだ――に加え、その豆にふさわしい焙煎プロファイルがセットになって提供されるという第4の波を象徴するような取り組み。コーヒーの味わいを決める「生豆」にこだわり、それを自分で焙煎して、鮮度とともに変化していく香りや味わいを楽しむことができるという、これまでにない本格的なものだ。

    ポイントとなる焙煎プロファイルは、福岡「豆とうかどう香洞コーヒー」のオーナーで2013年焙煎世界大会チャンピオンの後藤直紀氏が、豆の特長に合わせて、1種類の豆に2〜3パターン作成。そのデータをスマートフォンやタブレットの専用アプリでクラウドから読み込み、焙煎機に転送することで焙煎士の技が自宅で体験できる仕組みになっている。

    今回、イギリスのベンチャー企業IKAWA社と技術提携して開発された熱風式焙煎機は、豆の特長を引き出すための温度や風量制御に優れており、とてもコンパクト。鋳物感のあるシボがなんとも上品な佇まいを見せている。日本向け仕様にするにあたって、単に電圧を変えただけでなく、細やかな温度管理のためにセンサーを調整し、低い電圧でもしっかりと熱量を上げるように再設計して、安全性や使い勝手にも配慮したものにしている。サイクロン技術の応用で焙煎時に出る生豆表面の皮(=チャフ)を分離し、雑味のない味わいのコーヒーが淹れられるのもうれしい。

    予熱や冷却も含め、焙煎にかかるのは10〜15分程度。白っぽくほとんど香りのなかった豆がしだいに茶褐色に色づいて香ばしさが部屋に漂う過程は、これまでになかったコーヒー体験でとても新鮮に感じられる。同じ豆でも複数の焙煎プロファイルがあり、さらには豆の挽き方や淹れ方――テクニックの必要なペーパードリップなのか、フレンチプレスなのか、コーヒーメーカーなのか――によっても異なる味わいに仕上がるのだから、楽しみ方は無限だ。

    ローストの際に感じられる強めの香り、グラインダーで挽いた時のなんともいえない幸せなフレグランス、淹れ立ての1杯の馥郁としたアロマという、香りの3ステップをぜひ体験してほしい。

    1パック200ℊの豆が2〜3種、多彩な産地から毎月届く。初回は、ブラジルとエチオピアの2種をサービス。

    神原サリー
    新聞社勤務を経て「家電コンシェルジュ」として独立。豊富な知識と積極的な取材をもとに、独自の視点で情報を発信している。2016年、広尾に「家電アトリエ」を開設。テレビ出演や執筆、コンサルティングなど幅広く活躍中。
    ※Pen本誌より転載