マスキュリンなポプリで楽しむ、密やかな香り。

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    写真:永井泰史 文:小川 彩

    #14マスキュリンなポプリで楽しむ、密やかな香り。

    無機質なビジュアルが印象的なマドエレンのポプリ。手づくりならではの、風合いある鉄のキャニスターに入れたアカシアの樹脂や溶岩石に香りを染み込ませています。

    窓を大きく開けて部屋に風を通したくなる季節。ほのかな香りがふっとよぎると癒されますね。今回はそんな瞬間をインテリアに取り入れる、香りのプロダクトを紹介しましょう。フェミニンなデザインのものが主流だったアロマディフューザーやアロマキャンドルなどに、クラフツマンシップやデザイン性を感じるものが増えてきました。

    東京・神宮前のエルムタージュは、ヨーロッパを中心としたフレグランスアイテムを主に、香りのある暮らしを提案しているショップです。プレスの山野哲昭さんが、「天然原料を主体に製造しているメーカーのものをなるべくセレクトしているので、化学的な香りや成分による不快感がほとんどないんです」と言うように、シリコン、パラベン、パラフィンなど石油成分を使用せず、デリケートで穏やかな香りを生かしたアイテムが揃います。

    自然から抽出した要素をブレンドしたマドエレンの香りは男女問わず好まれるもの。溶岩石とアカシアの樹脂、ともにサイズはプティ(¥15,120~)とグラン(¥19,440~)の2種。

    同シリーズのオードパルファム、オードトワレ、そしてルームスプレー。紫外線から繊細な香りを守るため、遮光性が高いダークネイビーのボトルを採用しているそう。

    なかでも代表的なブランドが、フランスの「マドエレン」。ユニークな名前はマルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』の第1章に登場する、焼き菓子のマドレーヌを紅茶に浸して食べたことから過去の記憶が一気によみがえる、というエピソードから名づけられているとか。家族経営のこのブランドは、プロヴァンス地方のサンジュリアンに16世紀から残る民家のアトリエで、世界各地から取り寄せる最良の状態の植物から蒸留抽出した成分をブレンドし、独自の香りを生み出してきました。石油成分を使用しないほか、動物実験も行わないというポリシーを打ち出しているエシカルなつくり手です。

    パッケージにも独自の世界観が反映されていて、視覚にも香りにも訴えるインテリアオブジェとしての魅力を放ちます。手製のラベルが貼られた鉄製のキャニスターは、モロッコで職人が一つひとつを手作業でつくったもの。無機質な容器には香りを染み込ませた黒い多孔質の溶岩石とオレンジ色の樹脂のポプリ2種と、アロマキャンドルが詰められています。

    台座付きルームキャンドル(350g)¥15,120~。アロマキャンドルには蓋のついた鉄製のもの(¥11,880~)や真鍮やコッパーのバケツ型などもあります。

    旅好きな収集家の飾り棚を見るようなマドエレンのラインナップ。ストーリーを感じるパッケージデザインはもはやインテリアオブジェ。香りとともに記憶に残ります。

    「オーナー一家はアーティスト気質で、香りのコレクションには定番と呼べるものはあるものの、いつ製造中止なるかわかりません(笑)。すべてが限定品であり、シーズンズスペシャルであると言えるのかもしれません」

    実際に製品はすべて半年前のオーダーを受けてから製造するため、香りもプロダクトも毎シーズン限られた点数しか入荷しないそうです。エルムタージュでは、柑橘類の「ネロリ」、イチジクのフルーティーさと木質の香りがブレンドされた「フィグ」、そしてフレッシュハーブとミントがブレンドされた「スピリチュエル」が人気のほか、タバコなどスモーキーな香りをベースとした男性的なものもセレクトされています。ポプリはお気に入りのトレーに入れて部屋の片隅やエントランスなどに飾っても。付属のリチャージャーオイルを染み込ませれば香りがよみがえります。使いやすいルームスプレーやオードトワレなどもシックなボトルデザインで何種類か揃えたくなります。

    オブジェとしても美しい、五感をくすぐる香りのアイテム

    昨年発売のポーリーン・デルトゥアによるアロマディフューザー「プロメニューズ」。ティーキャンドルで温めてさまざまな香りを楽しめます。¥42,120(ティーキャンドルとセンテッドカメオ各4点付き)

    ポンプを手で押すクラシカルなスタイルとデザインのルームスプレー(375ml)。蓋をプッシュするよりも香りの強さを調節しやすいかもしれません。¥29,160

    もうひとつの代表ブランドが「シールトゥルドン」。1643年に創業したフランス最古のキャンドルメーカーで、インテリアにおける香りの楽しみ方を提案してきました。ポーリーン・デルトゥアにデザインを依頼して発売したアロマディフューザーは、香りとともにガラス越しのキャンドルの炎を楽しめる注目のアイテムです。

    定番はアロマキャンドル。シャンパンクーラーにインスパイアされた形状のオリーブグリーンのガラス容器はトスカーナ地方ヴィンチ村のハンドブロウのもの。キャンドルの素材はパラベンや防腐剤を使用せず、無農薬の植物性ワックスと蜜蝋をブレンドした天然素材のみを使用。ススが出にくいコットン100%のウィック(芯)は、揺らぎも少なくロウが長持ちするそうです。

    香りは日本人好みのものをセレクトしていて、モロッカンミントティーをイメージしてブレンドした人気の「アブデルカデール」、ユーカリ・ミント・紅茶などの香りをブレンドした「ダダ」、ラム・グレープフルーツ・クローブ・タバコなどスパイシーな香りが特徴の「エルネスト」など、心地よい男性的な香りも揃います。

    ルイ14世の紋章と蜜蝋の象徴でもある蜂の巣をモチーフにしたゴールドのラベルがアイコンの定番キャンドル。美しいボックス入りなのでプレゼントとしても喜ばれます。¥6,804~

    大きさは、トラベル(100g、25~30時間燃焼)、クラシック(270g、55~60時間燃焼)、そしてグレート(3kg、300時間燃焼)の3タイプ。色違いはクリスマスなどに発売されるリミテッドパッケージです。

    エルムタージュとはhermitage(隠れ家)とroom(部屋)を掛け合わせた造語。どこか密やかでデリケートな感覚が求められる「香り」にふさわしい店名です。オーナーの佐々木康裕さんはアパレル業界でライフスタイルアイテムのバイヤーをしながら、マドエレンはじめインテリアで楽しむ香りのアイテムに早くから注目していました。独立後、輸入総代理店としてマドエレンやシールトゥルドンなど伝統と物づくりにストーリーを感じるプロダクトを紹介し、2012年にエルムタージュをオープンしました。

    現在、訪れた方が自分の好きな香りに出会えるよう、調香のプロを招いたミニセミナーや、店頭で香りを探すアドバイスの機会を設けているそう。ルームスプレーを使ってギフトのパッケージに香りを移すなど、日常でのちょっとした香りの楽しみ方も教えてくれます。まずはキャンドル1本から、お気に入りの香りをゆっくりと探してみませんか?

    青山通りから明治通り方面に路地を入る閑静な一角にあるエルムタージュ。ヨーロッパを中心とした香りのアイテムと、香りに寄り添うアンティークやプロダクトなどが揃います。

    Heroomtage

    東京都渋谷区神宮前5-45-5
    TEL:03-6427-9307
    営業時間:11時~19時
    定休日:火
    http://heroomtage.com