無意識に“女性のもの”と思い込んでいたメイクやスキンケアが、身近なものになってきた。男性のメイクとスキンケアで気をつけたいポイントを、『男の身だしなみ ナチュラルコスメ ベストアイテム』(講談社刊)の著者であるヘア&メイクアップアーティスト、宮田靖士さんに教わった。
目的はあくまで“補正”。男らしさを自然に演出するメイク術。
「男性が女性と同じアプローチでメイクする例を目にすることが多いと思いますが、それは本来イレギュラー。まったくなにもしない“ゼロ”か、とことんやる“100”かと極端になっているけど、その間のグレーゾーンを狙うといいバランスになります」と語るのは、多くの俳優のヘアメイクを手がける宮田靖士さん。一般的な男性のメイクは「あくまでも補正」という意識をもつことが重要だそう。「たとえば、肌の凹凸が気になるならプライマーで毛穴を目立たなくするとか、眉がまばらで薄いならペンシルでちょっとだけ埋めてみるとか。すべてのパーツではなく、ポイントを絞ってメイクを添えるのがちょうどいいです」。また、そもそもの素肌を整えることも、メイクの延長だという考えもある。「水分量の安定した肌はテカりにくく、清潔感が出ます。そのナチュラルな印象をメイクで引っ張るくらいが、男らしさ、つまり色っぽさにつながると考えています」
多くの男性はメイクをしていることは隠したいはず。でも、カッコよくなりたい。「メイクは、バレるかバレないかの微妙なさじ加減が重要。あくまで自分の魅力を引き出すツールと捉えて、こっそりバレない程度に仕込む。すると、本来のよさが自然と際立ち、自然に色っぽさが増します」
【STEP 1】プライマーで、肌表面をフラットに。
肌をカバーするアイテムとしてファンデーションがあるが、厚みが出やすいので、男性にはやや過剰。「素肌になりすますプライマーがお薦め。手で簡単に塗れるし、数秒で色みを補正して毛穴が目立たなくなります」
【STEP 2】コンシーラーで、ニキビ跡やクマを薄く。
肌のシミやニキビなど、トラブルをカバーするコンシーラーを活用。「クマを消すこともできますが、隠すという意識で完全に消すと分厚くなり“メイクしている感”が。ほのかなクマは色気にもつながるので、ラフに補正を」。アラを少しマシにする感覚で。
【STEP 3】眉毛と髭を、ボリューム操作。
「眉が不足しているとどことなくゆるんだ印象になりがちですが、眉があると印象が引きしまります」。眉のフォルムを描くのはペンシル、もともとある眉毛のボリュームをアップさせるのがマスカラだ。
【STEP+α】くぼみに、ひとさじアイシャドウ
抵抗があるかもしれないが、アイシャドウも男前に利用できる。「会食やデートなど夜のシチュエーションで、トープ(ベージュを含むグレー)のアイシャドウを入れる。まぶたの目頭側、眉頭の下にあるくぼみに、指でさっと薄く入れると、メイクしているのがバレずに目もとに陰影が演出できます」
男の素肌を底上げする、ミニマムケアを実践。
男性はおおむね、いつもすっぴん。だから、素肌は美しくありたい。アルコール過多の安価なスキンケアを安易に使って逆に肌が乾燥している男性が多いが、間違ったケアはトラブルのもと。まずは、“洗顔”と“化粧水”、それに“プラス1品”を加えた最低限の3ステップを。水分と油分のバランスが安定して、日中もテカらずカサつかない、男前な肌になるはずだ。
1.ひたすら水分を肌に届ける、シンプル化粧水。
洗顔後そのままだと、火照った体温も手伝って水分不足に。毛穴が開いているうちに化粧水で保湿を。水の層をつくり、水分量を増やす「ザ・タイムR アクア」(写真右手前)は、無香料で無色透明。飽きないシンプルさ。
2.弾力ある泡で、汚れを取り去る洗顔ケア
日中に分泌された皮脂や汚れで肌はダメージを受けている。そこで重要なのが夜の洗顔。「コンフォート ストレッチィ ウォッシュ」(写真右奥)は糸を引くような濃密な泡立ちで、角質の汚れを吸い上げる設計。
3.肌の酸化を防ぎ、潤いを持続させる保湿セラム
化粧水の後にプラスα。パセリシード配合で抗酸化作用があり、肌を守りながらアロエベラの作用で保湿も叶えてくれる「フェイシャル セラム 34」(写真中央奥)を投入。使い続けることで、瑞々しさが増していくはず。
4.なめらかさと、健康的なツヤを仕込むオイル
保湿の後に、「アンチ W フェイスオイル」(写真中央手前)を2滴ほど手にとり肌に馴染ませると、化粧水で与えた水分が閉じ込められ、肌の水分量が安定。ビタミンEやオレイン酸が豊富で、ハリのある肌へと導いてくれる。
5.固くなった肌がやわらかくほどける、高機能セラム
予算に余裕があれば、化粧水後にアンチエイジング効果にあふれた美容液で仕上げるのもいい。「ザ セラム」(写真左)は、ヨモギやレンゲソウなどの美容有効成分が肌の角層にアプローチ。軽いクリーム状で、肌表面が美しく整う。
こちらの記事は、2020年 Pen 6/15号「いまこそ、『ジェンダー』の話をしよう。」特集からの抜粋です。