「このワクワク感は久しぶりです!」 噂のiPad Proをイラストレーターのエドツワキさんが試しました。

    Share:

    9月の発表以来、多くの話題を提供していた「iPad Pro」が、いよいよ日本でも発売となりました。iOSデバイスでは最大サイズとなる12.9インチのRetinaディスプレイを搭載し、純正スタイラスペン「Apple Pencil(アップルペンシル)」による直感的な入力など、初搭載・初対応の機能が注目を集めています。同じく純正の「Smart Keyboard(スマートキーボード)」がもたらすノートPCライクな使用感など、iPadユーザーが心待ちにしていたスペックも話題ですが、果たしてクリエイティブなツールとしてはどんな可能性を秘めているのでしょうか? モード誌や広告を中心に活躍するイラストレーターのエドツワキさんが、この噂のデバイスをいちはやく試用しました。

    「実はマッキントッシュで作品を描くようになって、今年でちょうど25年目を迎えたんです。最初に使ったのは『マッキントッシュⅡ ci』という機種で、その後、何台もの端末を使い続けてきました。『iPad Pro』には久し振りに新しいものに触っているワクワク感というか、高揚感がありますね」

    そう語るエドさんは、絵具などアナログな画材を用いて作品を制作する一方で、作品によってはPCを多用して制作を行うため、Macの使用頻度も高いといいます。

    「このコンビネーションを画材のひとつとして見た場合、最新のデジタル技術を駆使した高度な画材なのに、自分の中のプリミティブな部分を自然に引き出せるところに面白さを感じます。とりわけ『Apple Pencil』を、ガラス面の上を滑るように走らせて描くときのタッチが独特。同じことを画用紙などの紙で行う場合、特有の摩擦が生で描くときの醍醐味となりますが、それとはまた違う新鮮さがありますね。いわゆるリアルな紙とペンだったらこういうふうにはならないというような曲線やタッチを、この組み合わせなら引き出せる。そういう意味での気持ち良さや楽しさがあるのではないでしょうか」

    iPad Proに対応したアプリ「Paper by Fifty Three」を使って、実際に作業をしてもらいました。エドさんのフリーハンドによるペン先の動きと「Apple Pencil」のセンサーが絶妙な化学反応を生み出し、有機的なイラストレーションが次々と描き出されていきます。圧力と傾きの両方を計測するセンサーが備わった「Apple Pencil」でマルチタッチディスプレイにダイレクトに触れることで、フリーハンドによるなめらかな描写が可能になります。スタイラスペンとしてのポテンシャルも非常に高いというのがエドさんの印象で、デジタルデバイスなのに非常にアナログ的な楽しさを引き出してくれるような気がするといいます。

    「Paper by Fifty Three」を使い、マティスの切り絵を思わせるドローイングを描くことに熱中していたエドさん。絵の具の気泡のようなナチュラルなタッチを再現できる点もお気に入りの様子。

    入力用のパッドが必要だった従来のスタイラスペンと違い、ディスプレイから直接入力やレタッチができるところも、エドさんが好印象を抱くポイント。より感覚的な描写が可能な上、写真のようにソファに座って、リラックスした姿勢でのスケッチも楽しんでいました。

    「プロフェッショナルのイラストレーターである自分が、落書きの楽しさを再発見してしまう面白さがあるというか。普段はまったくやらないのですが、これを持ってピクニックに出かけて写生をしたい気分にもなります。余談ですが、若い男の子には、女の子を口説くツールとしてもお薦めしたいですね。ちょっとモデルになってくれない? といってポートレートを描いてあげたら、きっと女の子もグッとくるはずですよ(笑)」

    エドさんは、演奏や詩の朗読に合わせたライブペインティングを行うこともあるそうで、その構想やアイデアを練るツールとして活用するなど、湧き出るアイデアも尽きないようです。

    「ほかには『Photoshop Fix』というアプリも気に入っています。肌を整えたり、ノイジーな画像をきれいにしたりといったレタッチが『Apple Pencil』を使った感覚的な操作で簡単にできてしまう。操作が反映されるまでのタイムラグもないので、ストレスを感じることもありません」

    「フォトショップなどアドビのアプリが『iPad Pro』にいち早く対応したことに、このデバイスをドローイングや画像修正に活用してほしいという意思を感じます」と語るエドさん。実際に使用した上で「iPad Pro」が実践で使えるコンピューターである、と太鼓判を押していました。

    「Apple Pencil」は、追従性も非常に高く、フリーハンドによるなめらかな描写が可能。

    唯一、気になったこととしてあげたのは、「Apple Pencil」を本体やキーボードなどに収納できたらよかったということ。それ以外は「Smart Keyboard」のキータッチも非常に自然で心地よく、メールの送受信などの使用感はPCとまったく変わらないといいます。

    「いきなりここまで高いレベルのものを出してしまうと、今後のアップデートがたいへんなのではないかと変な心配をしてしまうほどです(笑)」

    25年前にマッキントッシュに初めて触れ、クリエイターとしての感性を刺激されたときを呼び起こさせた、「iPad Pro」。その性能を楽しみながら描かれたエドさんの魅力的なスケッチが、このデバイスのクリエイティブツールとしてのポテンシャルの高さを物語っているようです。(写真・江森康之 文・遠藤 匠)

    エドツワキ
    1966年広島県生まれ。イラストレーター、アートディレクター、画家。独学で絵画やデザインを学び、1988年よりイラストレーターとしての活動をスタート。代表作のひとつである日本の美人画を彷彿とさせる女性の肖像が国内外で高い評価を得て、モード誌や広告を中心にワールドワイドな創作活動を行っている。
    http://www.edtsuwaki.com/

    ※東京では5年ぶりとなる個展として、制作プロセスに偶然性を取り入れた新たな作品群を集めた『QUAKENESS』を、11/10より恵比寿POSTで開催。
    http://post-books.info/

    ※同じく11/10には、1990年に連作として制作された作品を集めた電子書籍による作品集『100 FACES』を、電子書籍レーベルTHETHEで発表。
    http://www.thethe.jp/

    2点とも今回、iPad Proを用いて制作した作品。最新のデジタルデバイスでありながら、アナログな感性を刺激されるとエドさん。