小林和人さんと選ぶ、クリスマスの贈り物。

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    写真:永井泰史 文:佐藤千紗

    #26小林和人さんと選ぶ、クリスマスの贈り物。

    扱うモノの魅力を語る店主の小林和人さん。その絶妙な語り口に、つい引き込まれてしまいます。

    12月に入って街が慌ただしくなると、今年のプレゼントはなににしようかと思い巡らせる人も多いのでは? 大切な贈り物だからこそ、ていねいに選びたい。どこにでもある店ではなく、信頼できる店主が選んだものを、雰囲気のいい空間で、その魅力を聞きながら買う。そんな時に思い浮かぶのが、小林和人さんの店です。今回はいまの季節にぴったりのギフトを代々木上原に移転した「ラウンダバウト」で選んでもらいました。

    吉祥寺の名店として17年もの間親しまれた「ラウンダバウト」がビルの建て替えにより、新天地に引っ越したのは今年4月。新しい店は駅からほど近く、閑静な住宅街のマンションの半地下にあります。元キャバレーを改装した吉祥寺店ほどアンダーグラウンドな雰囲気はないものの、小さな入口からは想像できない奥行きのある店内、建物の一角に巣くうような店の佇まいはそのまま。荒々しくも凛としたコンクリートの空間に、実用的で昔ながらの道具の良さを持ったものたちが並びます。日用品中心の品揃えは基本的には以前と変わらないものの、新しく取り扱い始めたアイテムもちらほら並びます。

    コンクリートの躯体がむき出しの店内。「OUTBOUND」と同じく、建築家の新関謙一郎さんが手掛けています。

    小林さんが「いま面白いアイテムはこれ」とまず手に取ったのが、YNOTのバックパック「Magnetica」。仕上げは2種。コーデュラナイロン¥35,640、ワックスキャンバス¥42,120

    同じくYNOTのパッカブルのデイパック「Deploy」を、小林さんは旅行用のサブバッグとして活用しているといいます。コーデュラナイロン¥13,500、ワックスキャンバス¥17,820

    やわらかな素材に真鍮の羽根ピンがアクセントになった、「saravah」のウールフェルトハット。¥19,440

    「saravah」は帽子職人・坂口直顕さんのハンドメイドによるハット・ブランド。クラシックモダンなデザインが魅力で、小林さんが被っているのも、「saravah」のもの。

    もともとライフル用だというイギリスの「CHESTER JEFFERIES」のグローブ。指を覆わないため、スマホの操作にも便利。¥12,960

    クラシックなデザインの、ドライバーが入れ子になる工具キットもギフトとしておすすめ。¥3,240

    「これ、どうやって開けると思います?」

    おもむろに小林さんが手に取ったのは、最近扱い始めたというカナダ・トロント発「YNOT」のメッセンジャーパック。通常のようにバックルサイドを押すのではなく、強力なマグネットにより開閉できるようになっています。旅行にも対応できる大容量で、背面にはノートPCが入れられるスリーブ付き。生地はコーデュラナイロンと経年変化を楽しめるワックスキャンバスの2種類で 、しっかりした上質なつくり。小林さんは主に出張や旅行用として使い、宿に着いたらパッカブルのデイパックに変え、街に繰り出すそう。デイパックは値段も手頃で、プレゼントに良いのではと、和やかによどみなく語る小林さん。

    次にオススメしてくれたのは、帽子職人・坂口直顕さんがつくる「saravah」のハット。小林さんが被っているベレーも「saravah」のもので、やわらかく馴染んだ風合いが気持ち良さそうです。店に置いてあるのは、小林さんの眼を通して選び、多くは実際に使っているもの。しかも、店にいれば、つくり手のことから使い心地まで、直接聞けるのも醍醐味です。

    体温が感じられる、少し前の機能的な道具が並ぶ店に。

    すっきりと端正な窓とジャンクな古道具とのバランス感が絶妙。こうした空間づくりにもセンスが光ります。

    次に女性に向けたプレゼントを選んでもらいました。まずは、ラウンダバウトでポップ・アップ・ストアも行っている「クロイゼ」のバッグ。シンプルでやさしい丸みを帯びた形がユニセックスな雰囲気で、色合いによって印象が随分変わります。続いて、ヴィンテージの輪転機で印刷したスウェーデンの壁紙を使った、ロゼポムンダルのノート。いろいろな柄がある中、小林さんはジャクソン・ポロックのようなプリントが店に合うとセレクト。シックでノスタルジックなノートは新年から始める日記帳にもぴったりです。

    小林さんが「ラウンダバウト」に選ぶのは、機能的でありながら、どこか手仕事の味が残されたプロダクト。「最先端の機能ではなくて、ちょっと前の機能なんです。人の手を掛ける部分が大きい工業製品など、機械と人が協働していて、体温の感じられるものに魅かれます」。日用品がつくられた初期の時代の純粋さをはらんでいるようなもの。実用的なアイテムが、相反するくすんだダークトーンの店内に並べられることで、古い外国映画のような独特の風景が立ち上がります。

    クロイゼの石原英樹さんによるふっくらとしたマチの立ち上がりが美しいショルダーバッグ。ナチュラル Mサイズ ¥28,080

    ショルダーバッグはブラウンやブラックもあり、ミニマムなデザインなのでユニセックスに使えます。ブラウン Lサイズ ¥41,040、ブラック Mサイズ ¥31,320

    素朴で上品なリトアニアのかごも新商品。ヘーゼルナッツ(¥12,960)と松の皮(¥9,720~¥11,880)の2種類。

    タークのフライパンなど、吉祥寺時代から「ラウンダバウト」の代名詞となっている定番アイテムも変わらず扱います。

    機能的なものだけでなく、時に遊びも忍ばせる。ネイティブインディアンが天気を予測したウェザースティック。

    ポスタルコなど、シンプルで美しい文房具たち。漠然と探していたものがここで見つかることも多いのいでは。

    1900年代のスウェーデンの伝統的な壁紙を使ったロゼポムンダルのノート。¥3,132

    什器は基本的に吉祥寺店のものを引き継いでいる。今回新たに加わったショーケースは、先日神楽坂の閉店する履物店で手に入れたものとか。

    アジトのような雰囲気の入口でありながら、取り澄ましたところがなく、温かな雰囲気なのがうれしい。

    「店主がもっている独特さが染み出ている店が好き」と言う小林さん。ラウンダバウトはまさにそんな店で、店名の“環状交差点”という意味の通り、オープンで人とモノとのつながりを大切にする小林さんのまわりに集まってきたものの反映のようです。移転してからは、ご近所のレストラン「LIFE 」と組んで、イベントを開催するなど、街に開いて行く活動もしていきたいとのこと。これから代々木上原を拠点にどんなカルチャーが生み出されるか、楽しみです。

    「ラウンダバウト」で買い物をするということは、店の雰囲気も含めて丸ごと買うという体験なのだと思います。時間と手間を掛けてモノを選ぶというのは、いまや贅沢な買い物の仕方ですが、大切な贈り物こそ、そうしたプロセスも楽しみ、心を込めて選びたいですね。

    Roundabout

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