シリコンバレーと工業デザインの歴史を紐解く話題の書、「世界を変える『デザイン』の誕生」が日本上陸!

    Share:

    いま手持ちの携帯電話は、何を基準に購入しましたか? 新製品だったから。機能重視。そのブランドのファンである。デザインが気にいった。または価格重視だったかもしれません。

    もしそのブランドのファンである、もしくはデザインで買ったという理由であれば、それが比較的新しい行動であることをある世代以上の方ならおわかりかもしれません。30年ほど前までは、パソコン、電卓、レコーダー、ステレオは一部の専門家や愛好家のための武骨な工業製品であり、最新技術こそが製品の価値でした。それが使いやすさや見た目の良さ、生活空間への順応など人間を中心にデザインが考えられるようになったことはデザインの歴史的転換を意味するものでした。

    ヒューレット・パッカードの電卓「HP-35」(1972年)やアップル社リサ(1983年)などデザインの転換点となった製品はありますが、最もインパクトがあったのは1998年発売のiMacです。単なるオフィス機器や一部の愛好家のための高価な機器であったパソコンが本当の意味で「パーソナル」になり、パソコンの概念を覆す斬新なデザインだったからです。デザインが消費者の行動をも変えることをはっきり証明した瞬間でした。

    いま、貧困や教育などの社会問題をデザインの力で変えようとする新世代が登場し、デザインはまた新しい転換期に入っています。ヒューレット・パッカードのクレメント、アンペックスのウォルシュ、IBMのストリンガーなど「第一世代」の伝説的デザイナーから新世代まで、膨大な数の資料とインタビューから、デザインの歴史と転換期を浮かび上がらせたのが、IDEO所属のバリー・M・カッツによる『世界を変える「デザイン」の誕生』です。

    いまほどデザインが重要視されていなかった時代を知るデザイナーであれば、当時の「不当な扱い」について溜飲が下がる思いがし、その時代を知らない人であればデザインの価値と意味がこれだけ短期間で変わったことに驚かされるはず。


    世界を変える「デザイン」の誕生
    シリコンバレーと工業デザインの歴史

    バリー・M・カッツ 著 髙増春代 訳

    定価:2,600円+税

    http://books.cccmh.co.jp/list/detail/1986/