着物の世界をモダンにした話題のショップが仕掛ける、ウールスーツ生地の着物、「T-KIMONO」

  • 撮影・文:高橋一史

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コラボレート着物、「T-KIMONO」を着た、デザイナーのT-マイケル(左)と、「Y. &SONS」ディレクターの矢嶋孝行。

最近の私たちの日常生活や、街中の飲食店などに、「和」のものが増えてきたと感じませんか?食卓に日本の器を並べ、美しい彩りの和菓子を買ってきて、日本茶と共にいただく。住まいは近代的な建築であっても、ごく自然にこの国の伝統が入り込んでいます。和洋折衷が当たり前になったのは、服装も同じこと。ゆったりと体にまとう形が流行していることもあり、着物や甚平のエッセンスを抽出したアイテムが多く出回るようになりました。

この風潮の中、着物業界の最大手である「やまと」が始めた意欲的な試みが、2015年に始動した店、「Y. &SONS(ワイ&サンズ)」。欧米の古い社名に見られる、「創業者と息子たち(=&SONS)」の名をもじった店名が象徴する品揃えは、西洋と和のミックス。主たるターゲットは男性で、着物に合わせやすい帽子、革靴、バッグなどの仕入れものも並んでいます。このたび同店が、新しいアイテムを打ち出します。ヨーロッパで活躍するテーラー&ファッションデザイナーのT-マイケル(T-MICHAEL)とコラボレートした、ウールスーツ生地の、「T-KIMONO」です。

ノルウェー在住のT-マイケルは、自身のブランドとテーラーショップを構え、高級防水コート「ノルウェージャン・レイン」のデザインも手がけています。どこか日本人と共通する穏やかなメンタリティを持ち、布の扱いのプロである彼が提案した生地は、厚手のウールフラノ。
「伝統の着物生地からなるべく離れる発想で選びました。一本だけ細いストライプがあるストイックな生地です」(T-マイケル)。
「着物はスーツと異なり、直線的な裁断をします。ストライプの位置をどこにするかT-マイケルと話し合い、一緒に新潟の和裁士さんのところまで出かけ、何度もやり取りして完成させた自信作です!」(Y. &SONSディレクター、矢嶋孝行)。
手持ちの洋服や小物とも合わせやすく、デイリーに着られる着物になりました。

T-マイケルによると、着物の形はあらゆる衣服文化に通じるそう。
「広げるとT字になる平面的な服は、アフリカの民族衣装でも見られます。スーツは曲線的なテーラーカットで、着物は直線的なアン・テーラーカット。でも、人が着たとき布の美しいドレープが出る着物をつくるのは、テーラリングと似た考え方なのです。違いは、スーツは体にフィットするほどに美しく、着物は締め付けないのが “粋” ということ」。
正統派な着方でも、写真のお二人のごとく洋服と組ませても、おしゃれになる着物です。発売は、2017年10月前後の予定。この機会に唯一無二の独創的なこの店を訪れ、世界にアピールできる私たちのモダン・ライフとは何かを探ってみるのも一興ではないでしょうか。


衿にさりげなくストライプが。色展開はネイビーとパープルグレーの2色。着物 ¥81,000、羽織り ¥75,600

袂にはテーラー仕立てふうに生地耳を配し、西洋の伝統と、チラ見せの日本的な美学を融合。

袖先にもストライプがあります。

神田明神の正面鳥居に隣接する、Y. &SONS。最寄り駅は、「御茶ノ水」。

Y. & SONS
東京都千代田区外神田2-17-2
TEL:03-5294-7521
営業時間:11時~20時
定休日:水曜日
www.yandsons.com