イギリスを代表するファッションブランドのマーガレット・ハウエルは、昨年2020年に創設50周年を迎えた。1970年の創業以来、デザイナーのマーガレット・ハウエルは、今日まで一貫して、クオリティと着心地にこだわったシンプルなリアルクローズをつくり続けている。
「若い頃は明日なにが起こるかを考えたりしないものです。日々忙しく楽しみながら仕事をして、気づけばもう50年。そんな感じです」と、オンラインでインタビューに応えたハウエル。
性別も年齢も、国籍も人種も問わず、誰のライフスタイルにもしっくりと馴染むマーガレット・ハウエルのワードローブ。控えめなデザインながら上品さと清潔感が漂い、毎日のように愛用したくなる。
「ずっと変わらずここまでやってきました。私はファッションデザイナーではなくクロージングデザイナーだと思っています。洋服は常に、明確な目的のために生まれます。直感に従って適切な素材や色を用途に合わせて使うこと。それを常に心がけています」
彼女が選ぶ生地とその色は、どこか懐かしくもありモダンで、そして生活の中に溶け込んでいくような、自然な風合いだ。
「昔から、上質なモノづくりを続けるイギリスの伝統的なブランドへの憧れを抱いていました。しかしそういったクラシックなブランドの服は、ときに重く、硬く、必ずしも着心地のいいわけではありません。だから私は、それをもっと軽く、やわらかく、自分が着たいようにアップデートさせていきました」
長い年月をかけて磨かれてきた上質な素材やスタイルを、現代の価値観に照らし合わせて再解釈していくことで、タイムレスな魅力はまた、日常生活の中で花開く。
クリエイションの源にスポットを当てる、回顧エキシビション
マーガレット・ハウエルのモノづくりの根底にあるのは、ロンドン郊外で育った幼少期の記憶だ。戦後まもなく三人姉妹のひとりとして生まれた彼女は、両親からモノの扱い方を学んだ。
「私は第2次世界大戦直後に生まれました。当時、両親は慎重にモノを選ばなければならず、自分が使うモノはすべて、一生モノの家具や毎日使うキッチン用品のように大切に扱うべきだと教わって育ちました。上質なものは手入れもしなければいけません。質のいいモノを選びたいという気持ちは、そのように育てられたことによるかと思います。
自分の服も当然、長く着ることのできる、実用的で、汎用性の高いモノを選ぶようになりました。だからといって、お洒落に興味がなかったわけではありません。ティーンエイジャーの頃はファッション誌も夢中で眺めていて、ミニスカートだって穿きました。腿まで出す当時トレンドのミニではなくて、やっと膝が出るぐらいの長さでしたが。それが私自身のパーソナリティやライフスタイルに合っていたからです」
ブランド創設50周年を記念して、マーガレット・ハウエルのクリエイションを振り返るエキシビションが、今月から代官山 T-SITE内のT-SITE GARDEN GALLERYとロームシアター京都で開催されている。アーカイブのコレクションやデザイン画をはじめ、特別に撮り下ろされた映像作品やパーソナルな思い出の品々まで、マーガレット・ハウエルの50年を凝縮させた見応えのある内容だ。全国のマーガレット・ハウエル店舗では、50周年を記念して特別に製作された、限定のシャツやバッグも販売される。常に普遍的な魅力を放ち続けるマーガレット・ハウエルの世界観に、親子3世代で触れてみるのもいいだろう。
A SHORT FILM BY EMILY RICHARDSON AND MARGARET HOWELL
「MH50 - 50 YEARS OF DESIGN」
開催場所:東京都渋谷区猿楽町16-15 代官山T-SITE GARDEN GALLERY
開催期間:5/15〜5/30
開催時間:11時〜19時
料金:無料(事前予約優先入場)
開催場所:京都府京都市左京区岡崎最勝寺町13 ロームシアター京都 パークプラザ3F
開催期間:6/4〜6/13(6/7は休館)
開催時間:10時〜19時
料金:無料
※開催日時・内容などが変更となる場合があります。事前の確認をお薦めします。