世界一幸福な国の暮らしのかたちに触れる、「デンマーク・デザイン」展へ!

  • 文:内山さつき

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<ザ・チェア>(椅子の中の椅子)とも讃えられたヴィーイナのこの椅子は、ジョン・F・ケネディとリチャード・ニクソンとのアメリカ大統領選挙戦のテレビ討論会で用いられた。ハンス・ヴィーイナ(ウェグナー)、《椅子 JH503<ラウンドチェア/ザ・チェア>、1949年。Photo: Michael Whiteway

国連が発表する世界幸福度ランキングで常に上位にランクインし、2016年は1位となった北欧の小さな国デンマーク。九州ほどの大きさの国土に、約560万人が暮らしています。福祉国家、アンデルセン、レゴブロックなどでも知られるデンマークですが、日本でも人気を誇る北欧デザインの分野においても数々の巨匠を輩出してきました。

古くからすぐれた職人技術を持っていたデンマークは、20世紀半ばのミッドセンチュリーと言われる時代に、アーネ・ヤコプスン(アルネ・ヤコブセン)、ハンス・ヴィーイナ(ウェグナー)、フィン・ユールなどの建築家、家具デザイナーが国内外で高く評価されたことによって、デザイン大国の地位を確立しました。そのデンマーク・デザインの特徴をなすのは「オーガニック・モダニズム」。自然の造形美を取り入れたやわらかくあたたかみのある形と、量産を可能にし、人間工学に基づいたモダニズム・デザインとがバランスよく融合しています。

デンマーク語には、家族や友達など人と人との触れ合いから生まれる、心地よい雰囲気を表す「ヒュッゲ(hygge)」という言葉があります。室内でくつろぎながら気のおけない人たちとあたたかな時を過ごすことを、デンマークの人たちはとても大切にしているのです。そうした考え方が、シンプルで美しく、生活に寄り添う機能性を持ったクオリティの高いデザインと根底で結びついているのでしょう。

デンマークのデザインに特化した日本初となるこの展覧会には、家具、テーブルウェア、照明器具などを中心とした、20世紀初頭から現在に至るまでのデンマーク・デザインが集結します。ロイヤルコペンハーゲンの優美な陶磁器から、デンマーク・デザインの胎動期の作品、デンマークをデザイン大国へと押し上げたミッドセンチュリーの名品など約190点が一堂に。会場には、ハンス・ヴィーイナの椅子に座ることのできるコーナーも。デンマークが培ってきた豊かな創造性を体感できる展覧会です。


デンマーク・デザインの原点であり、日本でもファンの多いロイヤルコペンハーゲンの陶器。アーノル・クローウ、《記念プレート1888》、1888年、ロイヤルコペンハーゲン。塩川コレクション。

「オーガニック・モダニズム」の代表的な提唱者の一人、アーネ・ヤコプスンの洗練された美しい造詣のカトラリー。アーネ・ヤコプスン(アルネ・ヤコブセン)、カトラリー<AJ>、1957年、A・ミゲルスン。Photo: Michael Whiteway

シェードが美しい曲線を作り出す、照明器具の名作とも言われる作品。72枚あるシェードは絶妙に配置されていて、光源が直接目に入ることがないよう設計されています。ポウル・ヘニングスン、ペンダント・ランプ<PHアーティチョーク>、1957年、ルイスポールセン。Photo: Michael Whiteway

デンマーク・デザイン

開催期間:~6月25日(日)
開催場所:横須賀美術館
開催時間:10時~18時
休館日:5月8日(月)、6月5日(月)
入場料:一般¥1000
www.yokosuka-moa.jp/