歴史ある街に突如現れた新・デザイン拠点、「DESIGN 小石川」がおもしろい!

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    窓からは小石川大神宮の鳥居が見える秘密基地のようなロケーション。

    昔ながらの東京の面影を残す文京区小石川界隈。東京ドームや小石川植物園からもほど近い、穴場エリアに、「DESIGN小石川」が誕生しました。ロケーションがまた、秘密基地のようで魅力的。小石川大神宮という神社と一体になったビルの2階なのです。60年代に建てられたというレトロで味のあるビルを上がると、広々とした大空間。540㎡という広大なスペースは、ギャラリーとショップエリアに分かれています。

    店内で最大の「TAIYOU no SHITA KOISHIKAWA」は、デザイナー・小林幹也さんの直営ショップ。これまでにカリモクや天童木工、匠工芸、富士ファニチアなどから発表した家具や雑貨を一堂に集めています。お玉や靴べらといった生活小物から照明、ベッドやシェルフなどの大型家具まで、ひとりのデザイナーが手がけたとは思えない、幅の広さとアイテムの多さ。貴重な無垢の一枚板を豊富に揃えた、オーダーメイドのテーブルブランド「One Table」やオーダーキッチンを提案するコーナーもあり、トータルにインテリアの相談が可能。ブランドやメーカーの枠を超えて、暮らしに寄り添うデザイナーの姿勢が感じられる気持ちのいい空間となっています。

    ほかに、インテリアプランツとして注目を集める着生ランを専門に扱う植物店「B.U.D」、海外の生産者から直接買い付けたオリーブオイルを中心にした食材店「PLAIN COMPANY」という、こだわりの専門店が入店しています。

    モデルキッチンを提案したダイニングキッチンコーナー。

    先が浮いているので箸置きがいらない「UKI HASHI」。

    着生ランの専門店「B.U.D」。素焼き鉢や木板に着生したランを販売。自然に伸びた根や葉のかたちに風情がある。購入後のアフターフォローも万全なので、安心できる。

    世界的に評価の高いスペイン産オリーブオイルやトマトジュースなど厳選した食材を扱う「PLAIN COMPANY」。オリーブオイルは量り売りも。

    街とデザインをつなぐコミュニティー拠点へ。

    ギャラリーで開催中のオープニング展「MATERIAL AND STRUCTURE」(~8/23)。建築家・芦沢啓治さんが関わった家具やプロダクトが並ぶ。今年、デザイン・マイアミ・バーゼルでも展示された「グラビティライト」(中央)。右は直径約1mものガラス円盤が繊細さと迫力を生む「パラボラライト」。

    石巻工房のコーナーでは、テーマに沿って、新作の二俣公一のデッキチェアやトラフ建築設計事務所のスツールなどを展示。

    一方、ギャラリーでは、オープニング展として、「MATERIAL AND STRUCTURE」と題し、建築家・芦沢啓治さんがデザインした家具やプロダクトを紹介しています。

    「ほとんどは依頼があってデザインしたのではなく、先に素材があって、そこから自分が欲しいものを発想したもの。シェフが食材を生かして料理をするように、素材や構造の特性を引き出すようにデザインすることが多い」とテーマを説明する芦沢さん。その言葉通り、薄さ0.5mmの鉄板がたわんで優美なシルエットをつくりだす「グラビティライト」や巨大なガラス円盤とシンプルな構造のミニマルな美しさに引き込まれる「パラボラライト」などが展示されています。

    伝統ある弘前のナイフをしまうための桐のコンテナ「HIROSAKI KNIFE BOX」。展示品は販売もしている。

    デザインギャラリーとライフスタイルショップという複合スペースを企画した、芦沢さんにオープンの経緯を聞きました。

    「ビルが2年後に建て替えを予定しているので、期間限定で広いスペースを格安で借りられたのが直接のきっかけです。場所があれば、さまざまなイベントを仕掛けられる。僕自身8年前から小石川に事務所を構え、ディレクターを務めるDIYメーカー、石巻工房のショールームも小石川にあります。そんな縁の深い場所で、もっとデザインと街をつなげたいという漠然とした思いがありました。それは、東日本大震災後、石巻工房で学んだことの影響もあるのかもしれません。建築家やデザイナーがアクションを起こすことで、街の雰囲気が楽しく活気あるものに変わっていく。そんな関わり方を実践したい」街とデザインをつなぐ一環として、毎週土曜には、八百屋やコーヒースタンド、漆器や革工房などの地元商店が集うウィークエンドマーケットを開催。秋のデザインウィークにはデザインイベントも予定しています。

    「この街にデザイン拠点があるという意外性が面白い効果を生むはず。もともと小石川は生活と仕事が結びついたエリア。そんな地元の企業とのコラボレーションもしていきたい」他にも複数のデザイン事務所が同ビルに入居予定。地域を巻き込んで、新たなコミュニティーをつくる。にわかにデザイン拠点として活気づく小石川界隈に注目です。

    「DESIGN 小石川」が入居する60年代に建築されたオフィスビル。さまざまな人とデザインが出合うコミュニティー拠点となる可能性を秘めている。

    DESIGN小石川

    東京都文京区小石川2-5-7佐々木ビルB棟2階
    TEL:03-5689-5597(芦沢啓治建築設計事務所)
    営業時間:11時~19時
    定休日:水曜日
    http://designkoishikawa.com/