北海道日本ハムファイターズが誕生したのは2004年。道民にとって念願のプロ野球球団誘致とあって、以降、人気は不動だ。そしていま、新たな希望が姿を現し始めた。新球場の建設だ。専用球場での野球観戦という側面にとどまらず、地域振興をも含めた壮大なボールパーク構想が進行している。ファイターズ スポーツ&エンターテイメント(FSE)の前沢賢取締役事業統轄本部長は語った。
「最近、スポーツ観戦の概念が変わってきていると感じています。もちろんプロ野球もそうですが、球場は野球に興味のある人だけのものではない。副次的な目的、たとえばキャンプやイベントなどを楽しむ場として、広義に捉える必要があると思います」
前沢さんがイメージするのは、北海道らしさが感じられるボールパークだ。目指すのは、本来、スポーツがもっている醍醐味、つまり自然の中で最高のプレーを間近で体感させること。単なる球場という枠を越え、人々や地域とのつながりを生み出すという「北海道ボールパーク構想」だ。アメリカでは球場の新設・移転の際、企業誘致や都市整備も含めて周辺地域を再開発するのがトレンドである。
観客の興奮度はマックスに、極秘スペックを大公開!
計画地は北広島市。第一弾として、23年春に新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」がオープンする。国内の球場にはない新機能が盛り込まれるが、注目は、天然芝と全天候型を実現する開閉式屋根だ。FSE・事業統轄本部の小川太郎さんは、「天然芝の実現は設計の最も重要なポイントのひとつ。ここからスタートして、屋根の設計やガラスの壁といった構造を実現させていきました」と話す。国内外13の設計グループによるコンペを実施。設計プランは外と中をシームレスにつなぐことも重視し、周りの緑との調和も確保された。
新球場に続き、ライブエンターテインメントやアクティビティの施設が建設予定。「共同創造空間」をコンセプトに、パートナー、ファン、地元民が一体となって、地域を盛り上げていくベースとなるという。早く、新球場で白球の快音を耳にしたい。
ボールパークの未来予想図。
新球場の完成は、あくまでも壮大な構想の始まり。豊かな自然を活かしたさまざまな計画が明らかになるにつれ、期待が膨らむ。
栗山監督へ、10の質問。
就任早々から実績を残し、北海道民から熱烈な支持を得ている栗山監督。新球場での選手の起用や、監督自身が楽しみにしていることを訊いた。
Q1. 最初に新球場プロジェクトを聞いた時の印象・感想は?
最初は本当に実現できるのかと思うくらいの壮大な計画だと思いました。でも、これまでにない新しいコンセプトや設計で、ファイターズらしいチャレンジになっていますね。
Q2. 監督や選手からの要望はありましたか?
とにかく既存の球場設計や常識にとらわれない発想で取り組んでほしいと、ただそれだけでした。
Q3. 新球場のデザインについての感想は?
プロジェクトと向き合っている前沢さん(ファイターズ スポーツ&エンターテイメント・取締役)や三谷さん(同取締役)らしいアプローチで、その斬新さに心を打ち抜かれました。
Q4. 実戦での野球スタイルや戦術は変わりますか?
形状が変わり天然芝になることで、当然チームづくりや戦術も変わってきます。いずれにしても、全天候型そして天然芝という環境にいかに適応できるかがカギになります。
Q5. 新球場でお客さんとはどのようなつながりが生まれますか?
選手との距離も近くなりますし、野球の見方だけでなく見せ方もこれまでとはがらっと変わります。お客さんには新球場を一緒に育ててほしいと思っています。
Q6. 新球場でお客さんにどんな楽しみ方をしてほしいですか? どんな提案をしますか?
私も大リーグでいくつかの球場を見てきましたが、それに近いかたちになると思いますよ。いろんな観戦スタイルが可能になるので、みなさんにもそれぞれの楽しみ方を見つけてほしいですね。
Q7. 監督や選手にとってうれしい点はなんですか?
世界一のボールパークが北海道にできることは誇らしいことですし、そこで野球ができることはなにより幸せなことです。
Q8. ボールパークのエンターテインメントで楽しみたい施設やイベントはなんですか?
自然を活かした仕掛けが楽しみです。グランピングもできると聞いていますし、北海道の球場でしか体験できないことにチャレンジしたいですね。
Q9. プロ野球全体にとって、どのような効果がありますか?
自前で球場をもつ球団や、建て替える動きが出てくると思います。結果として、ファンのみなさんに野球を喜んでもらうことにつながるんじゃないでしょうか。
Q10. 北海道の少年少女野球や未来にとって、どんな役割が期待できますか?
ファイターズに入って新球場でプレーしたいと思う少年少女が増えることで、野球のレベルアップにつながってほしいですね。プレーするだけでなく、見ることを楽しみにしてくれる子どもたちが増えれば、こんなにうれしいことはないです。