光と影に魅了されて、若き才能が花開く。

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    Creator’s file

    アイデアの扉
    笠井爾示(MILD)・写真
    photograph by Chikashi Kasai
    猪飼尚司・文
    text by Hisashi Ikai

    光と影に魅了されて、若き才能が花開く。

    沼倉真理Mari Numakura
    東京藝術大学大学院在籍
    1991年、茨城県生まれ。2015年、東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。第63回東京藝術大学卒業・修了作品展にて藝大デザイン賞受賞。現在、東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻空間・演出研究室在籍。光と影、その関係性に焦点を当て、制作している。

    風にゆらぐレースのカーテン。そこにひと筋の光が差し込むと、布のひだに不思議な模様が幾重にも映し出され、カーテンの動きに合わせるように模様はどんどん変化していく。 
    21_21DESIGNSIGHTで行われた『動きのカガク展』で展示された『LayerofAir 』の作者、沼倉真理は東京藝術大学大学院在籍の23歳。正式な展覧会に出展するのは初めての試みだった。
    「スペインのバルセロナに旅行に出かけた時のこと。朝食を食べようと部屋から出て、階段を駆け下りた際、足を踏み外し捻挫してしまいました。友人が観光しているなか、動けない私はひとり、部屋のベッドに横たわって、ぼんやりしていました。その時ブラインドの隙間から漏れた光がレースのカーテンに映り込んでいる様子がとてもきれいだったんです」
    心奪われたその情景を、自らの表現に置き換えたい。このような背景から『Layerof Air』は生まれた。 
    ユニークなのは、光と風がつくり出す現象がどのように生まれるかという仕組みを、沼倉は包み隠すことなく鑑賞者に対しわかりやすく、ある種あっけらかんと提示している部分だ。
    「作者の固定した意図は、時に作品を見る者にはほとんど関係なかったりします。そのため極力、仕掛けをシンプルにし、ミニマムな要素になるよう削ぎ落としていきました」
    そもそも作品をつくる側よりも、鑑賞する側の意識や社会との関わり方に興味があるという沼倉。「万人受けすると思ってつくったものがあまり評価されないことがあれば、まったくその逆のこともあります。作者は人の意識までコントロールできるわけではありません。だから素直に自分がいいと思ったイメージを、ありのまま表現すべきだと思うんです」
    『Layer of Air』を鑑賞した人からは、「気持ちのいい午後に空を眺めているみたい」「家の中から雪が降っている様子を見ているようだ」など、本人が意識しなかった評価も出る。
    「作品と対峙した時の感情や見る位置、角度によって、同じ人でもまったく違う印象を受けると思います。ぜひ何度も繰り返し見ながら、いろんな感覚を楽しんでほしいですね」
    キャリアをスタートさせたばかりの沼倉真理の可能性は、作品同様に無限大だと言えるだろう。

    works

    『動きのカガク展』に出展された『Layer of Air』。21_21 DEISGN SIGHT(TEL:03-3475-2121) photo:Keizo Kioku

    『ほしづきよ』。光ファイバーの付いた板の上にマジックミラーを重ねて構成、月夜に光る無限に広がる草原にも似た光景を表現。

    ※Pen本誌より転載