“文字ハンター”が辺境を旅して集めた、世界の文字コレクション。その迫力ある展示を目撃せよ。

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    シリア文字
    手書きの聖書。16世紀。シリア文字は1世紀から9世紀頃まで、古典シリア語を表すために使われた文字で、古代都市エデッサ(現在のウルファ/トルコ)を中心とする地域で使われた。

    普段、漢字やアルファベットばかり目にしていると、なかなか気づきませんが、世界には300もの文字があるそうです。中にはすでに使われなくなって、解読できない文字も存在します。そんなミステリアスで奥深い文字の世界に魅せられたのが、京都の印刷会社「中西印刷」の6代目、中西 亮氏。世界でも稀な“文字ハンター”として、100を超える国を旅し、現在世界で使用されている文字40種を網羅する95種類もの文字を収集しました。その世界的にも貴重なコレクションから80点を展示した「文字の博覧会」が東京・京橋で開かれています。

    ヤシの葉に刻まれた丸っこい書体のビルマ文字。羊皮紙に美しい装飾と共に描かれた聖書のラテン文字。石片に刻まれた19世紀までクロアチアの島で使われていたというグラゴル文字。時代も国もさまざまな世界各地の文字を眺めていると、読めなくとも、文字資料そのものが持つ魅力に引きつけられます。それぞれの地域固有の素材を使い、筆記具や素材に適した文字の形が記された文書。その土地から生まれた民族性や文化性が結晶化した、バナキュラーデザインのように見えてきます。

    会場には、中西氏の旅の記録をまとめたノートも展示されています。文字を求めて、外国人がほとんど接触しないような奥地まで少数民族を訪ね、ある時はラクダに乗って砂漠を旅する。写真と共に、手描きの地図や文字、現地の切手、印刷物までもが美しくレイアウトされたノートからは、中西氏が文字資料に工芸的な魅力も感じていた様子が伺えます。

    うつろいゆく文字文化を残した貴重なコレクションをじっくりご覧ください。(佐藤千紗)

    バタク文字。薬(呪薬)を入れる容器。インドネシア、スマトラ島のトバ・バタク民族が用いる文字。

    ビルマ文字。
    漆塗りした貝葉に金箔を押し、黒漆で経文を書いた豪華な経典で、マージーズィ体ビルマ文字を用いている。

    「文字の博覧会−旅して集めた“みんぱく”中西コレクション−展」

    開催期間:~8月27日(土)
    開催場所:東京都中央区京橋3-6-18 東京建物京橋ビル LIXIL:GINZA2F
    開館時間:10時~18時
    休館日:水、8月10日~8月17日

    所蔵:すべて国立民族学博物館、撮影:すべて佐治康生