『同棲時代』『修羅雪姫』を手がけ45歳でこの世を去った、現代日本にも通じる上村一夫の劇画世界を回顧。

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    上村一夫・画「同棲時代」原画/『Weekly漫画アクション』1972年8/31号/上村一夫オフィス蔵

    日本経済が飛躍的に成長を遂げた1970年代初頭。その高度経済成長期に、日本のメディアを席巻していたのが「劇画」でした。大人がマンガを読む時代に描かれた「劇画」の題材は、極めてリアリスティックな社会であり、私小説的な人間関係です。その中で、なまめかしい女性像と独特の美学を確立して一世を風靡したのが、月産400枚以上という驚異的な執筆量をこなし、45歳で急逝した人気漫画家・上村一夫でした。

    2016年1月3日から、東京都文京区の弥生美術館で、回顧展「わが青春の「同棲時代」 上村一夫×美女解体新書展」が開催されます。

    広告会社勤務の今日子とフリーのイラストレーターである次郎の同棲生活を描いた『同棲時代』(72)、海外の映像作品にも影響を与えた『修羅雪姫』(72/原作・小池一夫)、三億円事件を描いた『悪魔のようなあいつ』(75/原作:阿久悠)などの代表作は、次々とTV、映画化され、若者世代に一大センセーションを巻き起こしました。回顧展では、500点にも上る原画や当時の資料を基に、上村作品の魅力、上村一夫の軌跡を紹介。上村が見つめた時代や人間像を再検証していきます。

    時代を振り返ることでレトロ趣味的に楽しめるのはもちろんですが、70年代と同様に混沌とする現代日本において、劇的な上村作品が、どんな新たな視点で再評価されるのかという意味でも、興味深いイベントです。(幕田けいた)

    上村一夫・画/小池一雄・原作「修羅雪姫」原画/『Weeklyプレイボーイ』1972年3/7号/上村一夫オフィス蔵

    上村一夫・画/阿久悠・原作「花心中」扉絵原画/『ヤングレディ』1973年10/29号/上村一夫オフィス蔵

    わが青春の「同棲時代」 上村一夫×美女解体新書展

    会期:2016年1月3日(日)~3月27日(日)
    開館時間:午前10時~午後5時 (入館は4時30分までにお願いします)
    開催場所:弥生美術館 
    東京都文京区弥生2-4-3 TEL:03-3812-0012
    休館日:月  ※ただし、1月11日・3月21日(月祝)開館、翌1月12日・3月22日(火)休館
    料金:一般900円/大・高生800円/中・小生400円

    期間中には、上村一夫の長女・上村汀氏を迎えたギャラリー・トークや、糸井重里氏、曽我部恵一氏(サニーデイ・サービス)を迎えた、記念トークショウや音楽イベントも開催されます。
    http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/