武士たちが挑んだ知的事業「印刷」とは? 戦国から江戸時代の個性あふれる印刷物を集めた、「武士と印刷」展をお見逃しなく!

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    「稲葉山中におゐて荒猪を生捕たる強勇を大将の目にとまり臣下とす」弘化4~嘉永5(1847~1852)年頃 所蔵:印刷博物館

    電子メディアの隆盛におされつつある紙媒体ですが、日本ではその人気が急に衰える様子はまだありません。それだけわが国には「印刷文化」が根付いているということでしょう。西洋で生まれた技術のように思える印刷ですが、実は日本で一番古い印刷物として有名なのが、770年の「百万塔陀羅尼」(仏教で用いられる呪文を印刷したもの)で、歴史でいえばグーテンベルクの大先輩なのです。

    こうした技術・文化は、やがて武士の時代になると、ますます華やかになります。印刷事業にこだわりをもって取り組んだ武士たちが現れたからです。文京区水道にある印刷博物館では、特筆すべき印刷物を製作した、戦国時代から江戸時代にかけての武将、将軍、藩主たちにスポットを当てた企画展「武士と印刷」を開催しています。

    展示は2部構成。「第1部 もののふたちの系譜」では、当時、大人気だった歌川国芳の武者絵を中心に、浮世絵作品を計150 点展示(展示替えあり)。当時人々が抱いていた「武士」のイメージを、印刷物から探ります。

    「第2部 武士による印刷物」では、戦国時代から江戸時代にかけて、約70人の武士が刷らせた約160点の印刷資料を紹介。武士と言えば達筆な筆書きのイメージが思い浮かびますが、彼らが個性豊かな印刷を全国的に行っていたことは、あまり知られていません。

    あの徳川家康が目指し、やがて実現した文治政治に深く関わった「印刷」とは? 徳川光圀が、印刷によって完成させた一大歴史書『大日本史』とは? 『解体新書』の翻訳で有名な前野良沢に師事した福知山藩主の朽木昌綱は、パリ、ロンドン、ユトレヒトの都市図などを使って、ヨーロッパの国々を紹介した『泰西輿地図説』を出版――。

    学校の歴史の授業では語られることのない、日本の文化史の側面を「印刷」というキーワードを通して読み解いてみてはいかがでしょうか。そこにはアナログ、デジタルを問わず、日本のメディア文化の未来が隠されているはずです。(幕田けいた)

    駿河版銅活字(重要文化財)慶長11~元和2(1606~1616)年 所蔵:印刷博物館

    『泰西輿地図説』寛政元(1789)年 所蔵:印刷博物館

    企画展のポスター

    「武士と印刷」

    開催期間:~2017 年1 月15 日(日)
    開催場所:印刷博物館
    東京都文京区水道1-3-3 トッパン小石川ビルB1F
    開催時間:10時~18時(入場は17時30分 まで)
    休館日:月曜日 (ただし1 月9 日は開館)
    12 月29 日(木)~1 月3 日(火)、1 月10 日(火)は休館
    入場料:一般¥500

    http://www.printing-museum.org/exhibition/temporary/161022/index.html