Penが選んだ、2019年4月の注目カルチャー[CINEMA/映画]

  • 文:細谷美香

Share:

クリエイティブを刺激する、本、映画、音楽を紹介する「Penが選んだ注目のカルチャー」。注目すべき作品を、毎月ご紹介します。

10年ぶりに帰ってきた、イーストウッド監督・主演作。
『運び屋』

商売に失敗し家族にもほとんど見放されている90歳の孤独なアール。クルマを運転するだけという仕事を引き受けるが、それはメキシコの麻薬カルテルのための運び屋だった。クリント・イーストウッドが『グラン・トリノ』以来、10年ぶりに監督と主演を兼任、驚きの実話をもとにした映画を完成させた。飄々とした余裕とユーモア、自由な精神が息づくサスペンスだ。

監督/クリント・イーストウッド 出演/クリント・イーストウッド、ブラッドリ―・クーパーほか 2018年 アメリカ映画 1時間56分 全国にて公開中。

©2018 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

若き巨匠が描き出す、激動の時代の足音。
『サンセット』

第一次世界大戦前、ヨーロッパの中心だったブダペスト。イリスは亡くなった両親が営んでいた高級帽子店で働き始める。王侯貴族が集う華やかなその場所には、裏の顔があった。『サウルの息子』で世界的に脚光を浴びたネメシュ・ラースロー監督が、ベネツィア国際映画祭などで高い評価を得た長編作。兄を探しながらいくつもの謎に足を踏み入れていくヒロインの姿に、後戻りできない激動の時代への予兆が重なる。

監督/ネメシュ・ラースロー 出演/ユリ・ヤカブ、ヴラド・イヴァノフほか 2018年 ハンガリー・フランス合作映画 2時間22分 ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開中。

© Laokoon Filmgroup– Playtime Production 2018

女王たちの孤独と対立。
『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』

16歳でフランス王妃の地位に就き、18歳で未亡人となったメアリー。スコットランドに帰郷した彼女は、エリザベス1世が支配するイングランドの王位継承権を主張する。実話をもとに、同じような孤独を分かち合いながらも対立せざるを得なかった“ふたりの女王”の物語を描き出す歴史ドラマ。宗教や世継ぎの問題を超えて対話する場面をはじめ、華と実力を兼ね備えた若き女優ふたりの芝居魂のぶつかり合いも頼もしい。

監督/ジョージー・ルーク 出演/シアーシャ・ローナン、マーゴット・ロビーほか 2018年 イギリス映画 2時間4分 TOHOシネマズ シャンテほかにて公開中。

© 2018 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED.