“アルピニストも見たことがない”光景に息をのむ、 ドキュメンタリー映画『アルプス 天空の交響曲』。

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    太古の時代、アフリカ大陸がユーラシア大陸に衝突し、地層が隆起したことで誕生したアルプス山脈。東西は約1000km、南北が約150km。東京・福岡間が約1000kmですから、日本の本州の約半分が全部山というとてつもない大きさです。アルプス山脈を地上から撮影した写真や映像では、そのドラマティックな成因やスケール感はなかなか把握できませんが、ドキュメンタリー映画『アルプス 天空の交響曲(シンフォニー)』は、一瞬の映像でそれらを理解させてくれます。その映像とは、空からの視点、鳥の視点。ヘリコプターに据え付けるシネフレックスカメラは、もともと軍事用に開発された空撮専用カメラ。ブレが少なくズームも滑らかで、アルプスをさまざまな側面から捉えます。

    山登りが好きな方は、山々が連なる絶景を見て、こんな場所をいつか歩いてみたいと思うかもしれません。鉄道好きは、まるで模型のように山間を駆け抜けていく山岳鉄道の映像にわくわくするでしょう。環境に関心のある方は、太古から変わらない大氷河に見とれ、20年後には数が半減してしまうという氷河のことを心配するかもしれません。鳥瞰の映像を見て、ドローンを使った映画のアイデアが思い浮かぶ方もいるでしょう(今年3月、ニューヨークで世界初の「ドローン映画祭」が開催されましたね)。アルプスは貯水池であり、観光や畜産といった産業の地であり、冒険や修道を行う場所でもあり、時には戦場だったことも。私たちが見聞きしたことがあるアルプスから、見たこともないアルプスまでを紹介してくれる交響曲のようなドキュメンタリー、皆さんには、どの楽章が心に響くでしょうか。(Pen編集部)

    酪農家やケーブルカーの点検を行う技術者(ちょっと楽しそう)など、なかなか見ることのできないアルプスの日常も。

    急斜面に作られたジグザグの道路は、人工物なのに有機的で、地表に描かれた絵のようです。

    『アルプス 天空の交響曲(シンフォニー)』

    監督&製作:ペーター・バーデーレ 共同監督:セバスチャン・リンデマン
    日本版ナレーション:小林聡美
    2013年ドイツ映画 1時間33分 配給:アルバトロス・フィルム
    4月18日からシネスイッチ銀座ほかにて公開中
    http://alps-tenkuu.com