フィルムの価値を次世代に伝える、第一線の写真家による「ゼラチンシルバーセッション」開催。

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    出展作家であり、今回お話をうかがった瀬尾浩司さんの作品。

    フィルムのプリント技術や機材、印画紙等を次世代に繋げるための写真家によるプロジェクト「ゼラチンシルバーセッション」。その8回目の展覧会が開催されます。今回は初の試みとして、34名の参加写真家が2人1組となり、それぞれが設定したテーマで作品が展示されます。また、米国からMichael Kenna氏を招いての特別展示や第2回 GSSフォトアワードも実施されます。

    効率や利便性が優先されるあまり、次々に姿を消す職人の技や手仕事。写真の世界でもそれは同様で、デジタル化に伴ない手間をかけた撮影や技術、作業場が失われつつあります。実際に現在、若いフォトグラファーの中には、フィルム撮影の経験がないという人も現れています。しかし、化学反応による「銀塩写真」にしか出せない奥行きのある表現は、次世代に残すべきであり、表現者として次世代のフォトグラファーの選択肢のひとつとしてフィルムや印画紙があるということは、とても意義があります。プロジェクトに参加しているフォトグラファーのひとり、瀬尾浩司さんにお話を伺いました。

    「僕がこのプロジェクトに参加したのは2008年の3回目からです。僕がいつもカラー写真をプリントしてるTCKというラボで写真家の広川泰士さんに会って、誘って頂いたのがきっかけです。その当時、僕は仕事の90%くらいはフィルムで撮影していました。僕はもともと写真家の植田正治さんのアシスタントとしてスタートしたので、植田さんのセレクトされた写真を朝まで何百枚もプリントしてました。最初のうちは何度も怒られ破られましたが、段々続けることで見えてくる世界がそこにはありました。だからフィルムには愛着があるし、そういうプリントの技術や機材が失われていくのは惜しいと思っていたので」
    デジタルは確かに手軽に撮影ができるし、すぐに撮った写真を見られるほか、コストの面でも多くのメリットがあり、そのスピード感などを含めて様々な時代ニーズと合っているといえます。フィルムの場合、プロではない人にとっては現像液の処理などの問題もあります。しかし、それを補ってもあまりあるフィルムの世界というのは、確かに存在するのです。これだけの第一線で活躍しているフォトグラファーが参加しているということが、何よりその証です。
    「僕がこのプロジェクトに入ってからも急激にデジタル化が進みました。確かにデジタルはコストダウンだと思います。でも、僕なんかはまだ暗室もキープしていますから、逆にコストダウンになってないんですよ(笑)。両方やるっていうことは、一番お金がかかるんです。でも、そう考えても、その技術があり、フィルムが売られているなら、ずっとそれを使いたいと思います」
    フィルムの未来に関しても、単純に考えればメーカーがつくらなくなったらもうフィルムはなくなります。
    「フィルム会社の人から『このフィルムは廃盤にするかもしれないんですが、どう思いますか?』 と意見を求められることもあります。フィルムを残すためにはある程度のロットで買う人がいないと、メーカーもつくり続ける事はできないというのもまた事実です。だからこそ、こういうプロジェクトがあるという事には意味があると思います。僕なんか、この中では若い方なんですが、他の人たちの作品を見てやっぱりフィルムの写真っていいなと思うんです。一度にこういった作品が見ることができる機会もなかなかないので、プロの方はもちろん、写真を始めたばかりの人や、あるいは写真の事があまり分からなくても、気軽に立ち寄って頂いても楽しめる展覧会になっていると思います」(大嶋慧子)

    出展作家のひとり、瀧本幹也さんの作品。

    瀧本さんとひと組で作品を展示する、市橋織江さんの作品

    会場風景

    「The 8th Gelatin Silver Session 2015 – Save The Film」
    4月25日(土)~5月9日(土)

    アクシスギャラリー
    住所:東京都港区六本木5-17-1
    TEL:03-5575-8655(会期中)
    開場時間:11時~19時
    ※5月5日はトークイベントのため16時で終了。 最終日は18時までの入場。
    会期中無休 
    入場料:¥300(一般) ※学生は無料
    www.axisinc.co.jp