経験・実績は不問! “世界一美しい本”をあなたの手でつくる、大注目のブックアワードが始まります。

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    「Steidl Book Award Japan」の頭文字を配したロゴは、「The Tokyo Art Book Fair」のオフィシャルロゴから派生させたデザインとなっている。

    この秋、8回目を迎える「The Tokyo Art Book Fair」。名だたる出版社から個人でつくるZINEまでと、垣根を超えて、本を愛する個性豊かな約300組が一同に集結します。昨年度の来場者数は1万5千人を数え、いまやアジアで最大規模を誇るブックフェアとなりました。

    そして今年は、ドイツを拠点とするアート出版社Steidlの協力のもと、ブックアワード「Steidl Book Award Japan」が設立されることに。ブックフェアに先駆け、ダミーブックの募集がいよいよスタートします。なんといっても、魅力が満載。大注目のアワードです。

    Steidl社の創設者、ゲルハルト・シュタイデル氏によって選ばれたグランプリ受賞作品は、同社の制作により世界へ向けて出版されることになります。ドイツのゲッティンゲンにある本社に招待され、現地に滞在しながら編集からデザイン、印刷に至るすべての本づくりの工程をシュタイデル氏と同社スタッフとともに行うという、またとないチャンスが待っているのです。 

    カール・ラガーフェルドやエド・ルシェ、ロバート・アダムスといった、アーティストやクリエイターたちから絶大な支持を得て、Steidl社がこれまで世に送り出した本は4千冊以上。同社の大きな特徴は、自社内で編集、デザイン、印刷、製本、流通までを完結するという点ですが、これは、クオリティのコントロールが効いているからこそ成し得ること。Steidl社はそれらのシステムをもって制作をする出版社の先駆者であり、2000年代の最も重要な存在といえます。特にモノクロ写真の印刷技術は、お墨付きです。もともとは自身も写真家を志した時期があったという、シュタイデル氏ならではのこだわり。その卓越した技術もさることながら、「世界一美しい本をつくる男」と称される彼の芸術への造詣の深さが、多くの人々を魅了するゆえんなのでしょう。この場所で自分の本が制作されるなんて、夢のような話ではありませんか!

    また、Steidl社と一緒に制作するということはもちろん、応募作品がブックフェアで展示されることもポイントだといえるでしょう。多くの人たちの目に触れる機会のある、開かれたアワードであることがうかがえます。

    ゲルハルト・シュタイデル。1967年にデザイナー、出版人としてキャリアをスタート。ノンフィクションからアートと幅広い本を手がけ、「世界一美しい本をつくる男」という異名も。

    Steidl社がこれまでに制作した本の数々。ロバート・フランクをはじめ、ロニ・ホーン、ブルース・デヴィッドソンなど著名なアーティストたちがずらりと並ぶ。

    「本」という媒体でしか表現できないことを追求。

    ゲルハルトのオフィス。作家とのやりとりを記した書類、本や印刷の見本などが効率的に整理されている。Photography by Koto Bolofo

    数多くのクリエイターたちとの交流をもつシュタイデル氏ですが、なかでも、写真家ロバート・フランクとの親交が厚いそう。現在、Steidl社の印刷技術を用いたフランク作品の展示が世界各地50ヶ所を巡回中、11月には東京藝術大学で開催されます。

    今回のアワード開催に際して、もう一人の立役者であるThe Tokyo Art Book Fairディレクターの中島佑介さんはこう話します。
    「ロバート・フランクは、若き時代からダミーブックの制作を通じて、一貫して『本』という媒体でしか表現できないことを追究してきた写真家です。その表現とシュタイデルの『印刷』というクリエイティビティがシンクロして、若い人たちにも体感してもらいたいという思いから、今回のブックアワード開催に至りました」

    実は、中島さん自身もブックアワードのアイデアを温めてきました。
    「もともとThe Tokyo Art Book FairがZINEの文化を紹介する形としてスタートして、実際に自分で本を作るということが浸透した、という実感がありました。そこで次のステップとして、編集やデザイン、印刷などにおいて、より本のコンテンツに合わせたものをつくることで、人々に伝わる作品づくりをさらに意識してもらいたいと思うようになったんです。同時に、ビジネスとして本を扱う受け手側に、『届けたい』と思っているつくり手側がプレゼンできる場も必要ではないかと考えました」

    The Tokyo Art Book Fairのディレクターを務める中島佑介さん。恵比寿に構える中島さんのブックショップ、「Post」にて。(撮影:中村志保)

    昨年のブックフェアでは、これまでに中島さんが感じてきたことが新たな試みとして盛り込まれました。その一つとして、デザイナーのイルマ・ボームの企画展を行ったことや、インターナショナル・セクションを設けて、世界を対象に、ビジネスとして活動する出版社を紹介したことなどが挙げられます。

    今年は、Steidl社と中島さんの思いがリンクするように、アワードという形で結実します。
    「本づくりをするプロセスのなかで、“気付き”があるはず。一度作ってみると、既に出版されている本の見え方も変化してくると思います。楽しみながら、一つの学びの場ともなりそうですね」

    さぁ、まずはダミーブックをつくることからスタートです。ブックアワードの特設ページではダミーブックづくりに際してのアドバイスなど、順次更新される予定なので要チェック。今後は世界各地への展開を予定しているというSteidl Book Award、見逃せません!(中村志保)

    Steidl Book Award Japan

    申込開始:2016 年6 月1 日~
    参加申込締切:2016 年7 月31 日(日)
    作品受取開始:2016 年8 月5 日(金)
    作品受取締切:2016 年8 月20 日(土)必着

    選考スケジュール 
    9 月16 日(金)~19 日(月・祝):応募作品展示(The Tokyo Art Book Fair 会場)
    10 月上旬:グランプリ候補作品選考・発表
    11 月9 日(水):ゲルハルト氏による対面レビュー、グランプリ受賞作品選考
    11 月10 日(木):グランプリ受賞作品発表(9、10 日ともにロバート・フランク展会場)

    ブックアワード特設ページ:www.tokyoartbookfair.com/steidl-book-award-japan/ 

    THE TOKYO ART BOOK FAIR 2016
    会期:2016 年 9 月16 日(金)〜19 日(月・祝)
    会場:京都造形芸術大学・東北芸術工科大学 外苑キャンパス 東京都港区北青山1-7-15
    詳細:www.tokyoartbookfair.com