光と音、語りがつくり出す独自の世界。自動からくり人形作家の集大成となる展覧会「ムットーニ・パラダイス」。

  • 文:内山さつき

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自動のからくり装置で動く人形たちが生み出す、音と光の不思議な世界。人形作家の「ムットーニ」こと武藤政彦さんの展覧会、「ムットーニ・パラダイス」が世田谷文学館で開催中です。

スイッチを入れると動き出す、からくりの人形装置。箱の中で繰り広げられる人形たちの動きと音と光が奏でる独自の世界は、一度見たら忘れることができません。この「ボックス・シアター」のスタイルは、元は油絵を描いていた武藤さんが1990年頃から確立した独自のもの。作品制作を重ねるうちに、仕掛けはより複雑になり、時には本人の語りも重なり合うユニークな構成になっていきました。カチリと装置にスイッチが入れられると、ほの暗い箱の中に灯る淡い光。人形たちは命を吹き込まれ、その内側に秘めていた物語をそっと語りはじめます。近未来的でありながら、どこかノスタルジーを感じさせる独特の世界観も魅力の一つ。ある時には萩原朔太郎のミステリアスな短編の世界が、ある時には宇宙ステーションでの近未来の風景が、からくり装置の作動する十数分の間に展開されていきます。クライマックスにはめくるめく光が点滅し、壮大な音楽とともに観客をうっとりとさせることもしばしば。すべてが自動で行われているとはとても信じられないほどの濃密な舞台に、釘付けになってしまうことでしょう。

今回の展覧会は、そんなムットーニの集大成とも言えるもの。初期作品から新作までが揃い、会期中には作家によるギャラリートークやナイトツアーも開催。自動からくり装置が見せてくれる、ひとときの夢の世界に浸ってみませんか。

ムットーニ・パラダイス

開催期間:~6月25日(日)
開催場所:世田谷文学館
開館時間:午前10時~午後6時(展覧会入場、ミュージアムショップの営業は閉館の30分前まで)
休館日:毎週月曜日
入場料:一般¥800
www.setabun.or.jp/index.html