写真はアートなんだ! と気付かせてくれたロバート・フランクの写真展「Robert Frank: Books and FIlms, 1947- 2016 in Tokyo」へ行こう。

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    Robert Frank Tunnel (video still), color and black & white, 4 minutes, 2005 © Robert Frank

    現代を代表する、あまりにも有名な写真家ロバート・フランク。1947年から現在までに製作された写真・映像作品などを一挙に公開する「Robert Frank: Books and Films, 1947-2016 in Tokyo」展が東京藝術大学でスタートしました。「世界一美しい本を作る男」と呼ばれる、ドイツのSteidl社の創始者ゲルハルト・シュタイデルとともに企画された本展。世界の50都市を巡回中で、東京が11都市目となります。

    1924年スイスのチューリッヒに生まれ、23歳の時にアメリカへ渡ったフランクは、1959年に写真集『The Americans』を発表します。写されたのはオートバイやジュークボックスなど、その光景は決して珍しいものではありません。けれど、そこにフランクの独創的な視点があり、“時代性”が立ち上がります。アメリカ社会が激動した時代の“ニュー・カルチャー”と彼の表現は深く呼応するものだったことでしょう。それまでにないアメリカの姿を切り取ったことで世に衝撃を与え、「写真はアートなんだ!」と、人々の意識を変えてしまったほど。写真集の序文をジャック・ケルアックが執筆していることも感慨深くファンにはたまらない一冊なのですが、キャプションなどの文字は最低限に留められています。フランクは、付属としての写真ではなくそれ自体がアートとして見られるべきものだと訴えかけ、写真集の在り方にも変化を生んだのです。

    実は現在、アートマーケットで数千万円もの値がつくフランク作品。公開されるチャンスも非常に少ないのが常でした。そこで今回の展覧会に込められているのが、「とりわけ新しい世代に見てほしい」という写真家の強い思い。その展示方法に驚かされます。というのも、新聞用紙に写真を印刷し、学校や美術館などで無料で公開。そして会期終了とともにパフォーマンスによって破棄されるのです。「教育」に寄り添い、アートマーケットに抗う写真家の姿勢がなんとも痛快ではありませんか!

    写真、映像、本……と多様なメディアを通じ、フランクの新たな表現の追究は止むことなく、過去も現在も、私たちに問い続けています。(中村志保)

    Robert Frank checking the cover of the Steidl
    edition of The Americans in Göttingen, 2007
    © Gerhard Steidl

    © Copyright John McCarthy 2014 左:ロバート・フランク 右:ゲルハルト・シュタイデル

    Robert Frank: Books and FIlms, 1947- 2016 in Tokyo

    開催期間:~11月24日(木)
    開催場所:東京藝術大学大学美術館 陳列館
    東京都台東区上野公園12-8
    会期中無休時間:10時~18時

    http://steidlxtua.tumblr.com