「パロディ」。わたしたちがちょっと古さを感じながらもあたりまえに使うこの言葉。しかし、実はその意味をあまり意識せずに受け入れてはいないでしょうか。「引用」「模倣」「オマージュ」「風刺」などとどこが同じで、どこが異なるのか? どういった時に使われてきたのか? この「パロディ」に真っ向から迫った、ユニークで挑発的、そして思索的な展覧会が東京ステーションギャラリーで開催されています。
1960年代から日本のアーティストが実践し、70年代に入るとその言葉とともに社会的に大流行した「パロディ」。モダンからポストモダンへ、闘争と反抗に彩られた60年代から醒めた軽やかさを持った70年代へ。展覧会では、この時代を象徴する文化現象としての「パロディ」の技術や形式を改めて振り返り、その知略と批評のパワーと、笑いの感覚に迫ります。
レストランのメニューのような副題(これもパロディ?)が付された3章の構成は、「パロディ」定着前、「パロディ」隆盛時代、「パロディ」が提起した問題、をテーマに、視覚文化から時代の姿を浮かび上がらせます。ここでは、あえてその定義を広く捉え、時代や社会への反骨精神の表れとして表現されたもの、そうした批判も含めて醒めた目で茶化したもの、笑いそのものを楽しんだもの、と「パロディ」が時や場面に応じて変容していくさまが見られるようになっています。アート作品はもちろん、パフォーマンス、ビデオ作品、コミック、投稿型の雑誌から宣伝ポスターまで、時間軸の「前後」とともに、表現の幅としての「左右」を捉え、さまざまなジャンルや作品から立体的に検証しているのが特徴です。最後の章ではこの空前のブームの背後で進展していた裁判、いわゆる「パロディ裁判」を追います。作品は係争の対象となった表現のみで裁判の判決文と当時の報道資料で構成された、美術館の展示としては冒険ともいえる空間は、著作権法の枠外にあった「パロディ」の存在、表現とその権利についての鋭い問いを残します。
オリジナルに依拠しつつ、そこから自立した表現として軽やかに皮肉や笑いのパワーを発する「パロディ」。この表現形式がもつ“二重の声”は、コピーや加工、剽窃さえもより容易にしたデジタル時代の現代にも、時を超えてその楽しさと危険、それゆえにまとう問題を提起します。「パロディ」が放つ刺激、その幾重にも広がる軽妙な、しかし強烈な“ちから”を改めて感じてください。
「パロディ、二重の声 【日本の一九七〇年代前後左右】」
~4月16日(日)
開催場所:東京ステーションギャラリー
東京都千代田区丸の内1-9-1
開館時間:10時~18時(金曜日は20時まで、入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜(3/20は開館)、3/21
TEL:03-3212-2485
入場料:¥900
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/