「日産アートアワード2017」のファイナリストが決定! 世界に羽ばたく日本人アーティストに注目せよ。

  • 文:高久純子

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2013年より行われ、今回で3回目を迎える「日産アートアワード」。その第一次選考会が終了し、5人のファイナリストが決定しました。5月にニューヨークで行われた選考会には、日産自動車会長のカルロス ゴーン氏もオブザーバーとして参加。回を追うごとに意義を深めていく日産アートアワードについて、ゴーン氏に直接話を聞く事ができました。

日産アートアワードは、世界で羽ばたこうとする日本人アーティストたちに、国際アートシーンで活躍する後押しをすると同時に、日本の現代美術の足跡を残し、人々がアートに関心をもつ社会づくりを目指すというもの。一線で活躍するキュレーター、研究者などさまざまなキャリアをもつ10名が、それぞれ3名を推薦し、ノミネートされたアーティストは、さらに国際審査員会によって5名のファイナリストに絞りこまれます。今回のファイナリスト選考会は、アートウィークが開催中のニューヨークで行われました。

「審査とはまったく関わるところがないのですが、選考会の間に私なりのファイナリスト5人を想像しながら選び、楽しんでいました。しかし、審査員の選んだ5名のファイナリストと重複していたのはたった一人でした(笑)。アートのエキスパートであるという共通項をのぞけば、国籍や性別、バックグラウンド、立場も違う審査員たちが、インディペンデントな立ち位置で意見を戦わせ、熟考した結果選ばれた5人のファイナリスト。作品の形状や個性も違うアーティストたちが、いかにして絞り込まれていくのか。そのプロセスに、とても刺激を受けます」

白熱した選考会の余韻を楽しむように語るゴーン氏。過去2回の日産アートアワードが生んだファイナリストたちが、受賞後ほどなく国際舞台で活躍していることを見ても、同アワードの選考プロセスが、いかに厳格かつ的確であるかを窺い知ることができます。しかし、日産自動車が何故、現代アートなのでしょう?

「日産は日本の会社として、車という商品を通して社会に貢献してきました。従来の流れとは違うかたちで、なにか日本のためにできないかと考え、切磋琢磨している日本人アーティストたちが世界に羽ばたく手助けをすることを思いつきました。日本人アーティストの創造性の高さを世界に知らしめ、日本国内でも現代アートへの関心を高める手助けをする。その活動は、日産という企業の多様性にもつながっていくと思っています」

限られた時間の中で、ニューヨークのアートショー会場の作品を見つくしたというゴーン氏。現代美術の震源地といわれるニューヨークに集まる作品のバラエティの豊さとクリエイティビティの高さに、あらためて感銘を受けたと続けます。

「車にも現代アートにも、創造力によって人々の感受性を刺激するための方法を追求するという共通性があります。人や社会に対して、常に新しいことを表現することは、とても重要なことだと考えています」

NYで行われたファイナリスト選考会後、インタビューに答える日産自動車会長のカルロス ゴーン氏。

最終審査に挑む5人のファイナリストとは?

ニューヨークで選ばれたファイナリストたちは、この後、新作を仕上げ、最終審査に挑むことになります。

映像メディアを使って社会現象や、歴史の関係性を再解釈し、未来に向けた展望を示す作風の藤井光氏、ユーモアに満ちたセンスで俯瞰的写真イメージを作り出す題府基之氏、フライドチキンの骨やテレフォンカードなどの日常に存在するものをモチーフにした絵画を描く横山奈美氏、故郷の沖縄を題材にした写真で評価されている石川竜一氏、インスタレーション、映像、写真など多彩な表現方法を用いる田村友一郎氏の5人が選ばれました。

5人には、ファイナリスト賞金として各100万円と制作費が支給され、9月に開催される展覧会で新作を展示。そして会期中に行われる最終選考会に挑みます。そして、見事グランプリに選ばれたアーティストには、賞金とニューヨークのアート施設での3ヶ月間の研修・滞在の機会(総額500万円程度)が授与され、まさに世界への扉が開かれることに! また、ファイナリストの作品は「日産アートアワード2017」展として、横浜のBankART Studio NYKにて9月16日から11月5日まで一般公開されます。

「日本人アーティストが、世界デビューするための登竜門となるようなアワードになれば」と願うゴーン氏の夢は、回を重ねるごとに着実に現実に向かっています。

藤井光《帝国の教育制度》(2016年)ビデオ

1976年東京都生まれの藤井 光(ふじい ひかる)。

題府基之《Still Life》(2013)タイプCプリントにアルミマウント

1985年東京都生まれの題府 基之(だいふ もとゆき)

横山奈美《最初の物体》(2016)油彩・麻布 撮影:怡土鉄夫

1986年岐阜県生まれの横山 奈美(よこやま なみ)。

石川竜一《NAHA, 2013》(2013)アーカイバルピグメントプリント

1984年沖縄県生まれの石川 竜一(いしかわ りゅういち)。

田村友一郎《裏切りの海》(2016)インスタレーション

1977年富山県生まれの田村 友一郎(たむら ゆういちろう)。

日産アートアワード2017
主催:日産自動車株式会社
企画・運営:NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]

「日産アートアワード2017」展

会期:2017年9月16日(土)~11月5日(日)
会場:BankART Studio NYK 2F(神奈川県横浜市中区海岸通3-9)
休日:第2・第4木曜日
※9月27日(水)はイベント開催のため一般入場ができません。予めご了承ください。
協 力:BankART1929


問い合わせ先/NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]
電話: 03-6277-5561 
ファクス: 03-3780-026
メールアドレス: naa@a-i-t.net