日本美術界の綺羅星たちがずらり競演、「伝説の洋画家たち 二科100年展」をお見逃しなく!

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    日本の美術、特に近代絵画に興味のある人は、今すぐにでも駆けつけた方がいい。百年に一度だけ出来る、綺羅星のような画家たちの傑作が並ぶ展覧会。それが、上野の東京都美術館で開かれている「伝説の洋画家たち 二科100年展」です。

    1914年(大正3)に、当時の文部省美術展覧会(文展)の鑑査に不満を持った洋画家たちが「二科会」を結成、そして在野の公募展「二科展」を立ち上げました。今回開かれている「伝説の洋画家たち 二科100年展」は、「二科展」に登場した、まさにこの百年間の日本の絵画のエッセンスを集めた美術展といっても過言ではありません。
    岡本太郎、岸田劉生、国吉康雄、古賀春江、佐伯祐三、東郷青児、中川一政、藤田嗣治、松本竣介、安井曾太郎、吉原治良、萬鉄五郎……。これだけ多くの優れた作家たちの秀作が集まった展覧会は、見たことがありません。正直、自分の無知を恥じ、「二科展」を見直しました。おかしな例えですが、美術の教科書に載っている名作たちが目の前にずらりと並び、その名作と同等、あるいはそれ以上の傑作ではないかという未知の作品がまた続いている。そんな印象なのです。

    展覧会の構成は、百年の歴史を、「草創期」「揺籃期」「発展、そして解散」「再興期」の4期に分けていますが、どの時代の作品も見応えがあります。個人的には、日本最初の前衛絵画といわれる東郷青児の『パラソルさせる女』(1916)や、佐伯祐三のパリでの遺作『新聞屋』(1927)、国吉康雄の『サーカスの女玉乗り』(1930)など、何度見ても見飽きることがありません。
    またそれらは、美術というものが「世界」の流れ、「歴史」とダイレクトに繋がっているということも実感させるのです。特に心に焼きついたのは、1934年から1944年の「発展、そして解散」期、いまの時代と同様に、政治が右傾化していく状況のなかで描かれた松本竣介の『画家の像』(1941)でした。また戦後、関西の「具体」の中心となる吉原治良が描いた抽象画『空』(1943)の黒い絵具の塊にも、何かぐっとくるものがありました。
    兎に角、悪いことは言いません。四の五の言わずに、ご覧になってください。(赤坂英人)


    上段写真:岸田劉生 《初夏の小路》 第4回展(1917年 下関市立美術館蔵)。東京展の会期は9月6日(日)まで。

    上:岡本太郎 《重工業》 第34回展(1949年 川崎市岡本太郎美術館蔵)

    上:古賀春江 《素朴な月夜》 第16回展(1929年 石橋財団石橋美術館蔵)

    上:佐伯祐三 《新聞屋》 第15回展(1927年 個人蔵)

    上:東郷青児《ピエロ》 第15回展(1926年 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館蔵)

    「伝説の洋画家たち 二科100年展」

    2015年7月18日(土)~9月6日(日)
    東京都美術館 企画展示室
    東京都台東区上野公園8-36 
    TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
    休室日:月
    料金:¥1,500(一般)
    www.nika100th.com

    ※上記の東京展終了後、下記の大阪展、福岡展を開催。

    【大阪展】2015年9月12日(土)~11月1日(日)
    大阪市立美術館
    大阪府大阪市天王寺区茶臼山町1-82
    TEL:06-4301-7285
    休館日:9/14、28、10/5、13、19、26
    料金:¥1,300(一般)

    【福岡展】2015年11月7日(土)~12月27日(日)
    石橋美術館
    福岡県久留米市野中町1015 
    TEL:0942-39-1131
    休館日:月曜(11月23日は開館)