朽ちていくウサギや増殖するガン細胞を撮影した、注目作家マイヤ・タンミの個展「白兎熱/White Rabbit Fever」を見逃すな!

  • 文:内山さつき

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"Day 1" from the series "White Rabbit Fever," archival pigment print © Maija Tammi, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

深い森の中で静かに朽ちていくウサギ。確かに「そこにあった」ものが、次の日には形を失い、分解されて土に還っていく様を見て、あなたは何を感じますか?

息絶えたウサギを100日間に渡って定点観測し、撮影したシリーズ「白兎熱/White Rabbit Fever」が港区南麻布のギャラリー、KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY にて展示されています。生命とは何かを考えさせられるこの不思議な作品を生み出したのは、フィンランドの写真家マイヤ・タンミ。同名の写真集刊行記念として、日本で初めて個展が開かれました。

タンミは、この「White Rabbit Fever」シリーズと並行して、ヒトのガン細胞が増殖していく様子をとらえたシリーズも発表しています。ガン細胞は、養分と条件さえ揃えば、無限に分裂を繰り返します。タンミは、1951年に患者本人が亡くなってからも培養され続けているアメリカ人女性のガン細胞「ヒーラ細胞」や、1983年にフィンランドで亡くなった10代の患者の「パジュ細胞」を、ヘルシンキの研究機関と共同で経過観察を行い、撮影を続けてきました。どこまでも増え続けるガン細胞の姿は、ウサギのシリーズとはまた別の観点から、生命とは何かを問いかけてきます。

生命が失われ分解されていく身体と、生きた身体を離れ無限増殖していく細胞。朽ちていく身体はおぞましいもののようでありながら、神秘的な絵画のようでもあります。一方で、元の身体を失ったあとも勢いの衰えない細胞は、まるで意思を持った存在であるかのように私たちの前に立ち現れてくるのです。

科学的なリサーチをもとに、いのちの境界線と、生と死を巡る果てしない時間を見つめたこの個展は、アムステルダム、ヘルシンキ、ローマなどヨーロッパ各国でも発表され、好評を博しました。新進気鋭の作家による注目作品を鑑賞する、貴重な機会です。

"Day 17" from the series "White Rabbit Fever," archival pigment print © Maija Tammi, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

"Day 100" from the series "White Rabbit Fever," archival pigment print
© Maija Tammi, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

"Day 11799" from the series "White Rabbit Fever," archival pigment print
© Maija Tammi, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

展覧会会場の様子。

マイヤ・タンミ個展『白兎熱 / White Rabbit Fever』

開催期間:開催中~2017年9月24日(日) *23日(土・祝)、24日(日)は臨時オープン ※好評につき、会期延長になりました。

開催場所:KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY

東京都港区南麻布2-8-17 THE TUB
開廊時間: 12時~19時 ※金、土のみ開廊
休廊日:祝祭日、日〜木曜日
会期中入場料無料
http://www.kanakawanishi.com/exhibition-ph-002-maija-tammi