この週末は「見えないもの」を見る! 久保ガエタン個展「僕の体が僕の実験室です。あるいはそれを地球偶然管理局と呼ぶ。」へどうぞ。

  • 文:佐藤千紗

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昨秋、天王洲にオープンしたTERRADA Art Complex。その一角にある児玉画廊で、久保ガエタンの個展「僕の体が僕の実験室です。あるいはそれを地球偶然管理局と呼ぶ。」が開催中です。久保ガエタンは1988年生まれの新進気鋭のアーティスト。科学で説明できない超常現象から神秘思想まで含まれる「オカルト」をテーマに作品を制作し、目に見えない「オカルト」現象を実際に具体化し、鑑賞者に体感させる装置までつくって示します。

展示は、自身のルーツをたどるリサーチから発見されたモノや出来事をキーワードに、壮大なストーリーを展開するインスタレーションで構成されます。曾祖父の生地である塩の産地や、父のロンドンでのトリップ体験の記憶などを巡りながら、久保の思考は、アメリカの脳科学者であるジョン・C・リリー博士(1915-2001)にたどり着きます。映画「イルカの日」のモデルにもなったイルカと人間のコミュニケーションの研究や、肉体と精神を分離させ、高度な瞑想状態を得られるアイソレーション・タンク(感覚遮断装置)を発明したことで知られるリリー博士。天才的科学者でありながら、LSDやケタミンなどの薬物を実験に用い、最終的には「地球偶然管理局(Earth Coincidence Control Office)」の存在を主張するなど、マッドサイエンティストとも目されていました。今回、久保は実際にアイソレーション・タンクも体験しています。

「僕の体が僕の実験室です」というタイトルはリリー博士の言葉から採用しています。自分にとっての真実を探し求めながら、実地の体験を繰り返すリリー博士のアプローチは、久保自身にも重なるものがあるのでしょう。展覧会後には、母方の祖国フランスへ渡り、作品を制作するという久保。個人的な物語を軸に、狂気と現実の間を行き来し、見えないものを見るという、アートが持っている本質的な力を自覚する展覧会に足を運んでみませんか。

「僕の体が僕の実験室です。あるいはそれを地球偶然管理局と呼ぶ。」

開催期間:~3月4日(土)
開催時間:11時~18時(金曜は20時まで)
休廊日:日、月、祝日
開催場所:児玉画廊|天王洲
東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F
TEL:03-6433-1563
http://www.kodamagallery.com/