宮崎駿監督、高畑勲監督のアニメ作品を支え続けてきたアニメーター、故近藤喜文監督の回顧展「この男がジブリを支えた。近藤喜文展」が福島で開催!

  • 文:幕田けいた

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二人の巨匠を支えたアニメーターの回顧展です。※写真は別会場の物になります

国内外で高く評価されているスタジオジブリのアニメ作品。ところが宮崎駿監督は、最初からヒットメーカーだったわけではなく、むしろ、その作家性やクオリティが理解されるまで、長い時間を必要とした苦労人であることは知られています。またジブリの高畑勲監督も、さまざまな手法を日本のアニメ界に導入した立役者ですが、コマーシャルベース主体の映像業界では、なかなか思うような作品作りができなかった作家です。

この二人の仕事を、70年代のTV時代から支えてきたアニメーターが、98年に死去した近藤喜文監督でした。ジブリの長編作品『耳をすませば』(95)の監督といえば、分かりやすいでしょうか。近藤氏は『ルパン三世』(71)の原画などを皮切りに、『未来少年コナン』(78)の原画、『赤毛のアン』(79)のキャラクター・デザインや作画監督を担当した初期作品から、宮崎、高畑両監督の右腕で、『火垂るの墓』『となりのトトロ』が同時制作された時には、両監督が争奪戦を繰り広げたという逸話を持つ、腕の良いアニメーターでした。

その近藤監督の回顧展『この男がジブリを支えた。近藤喜文展』が全国を巡回し、福島の「福島さくら遊学舎」で開催中です。本展では、近藤監督が描いた「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」のキャラクター・デザインやアニメーション原画、「魔女の宅急便」のイメージボード、「紅の豚」や「もののけ姫」などの原画、監督作品「耳をすませば」の絵コンテ、キャラクター設定、セル・背景原画などが多数展示されています。

アニメで一番難しいのは「何気ない動きを描くこと」といわれますが、近藤監督はダイナミックなアクションだけでなく、日常シーンの動きでキャラクターの些細な機微を表現できた稀有な作家でした。その根底には、宮崎、高畑両監督とはまた違った、人を見つめる優しい眼差しがありました。

近藤監督が亡くなって9年の今年、宮崎監督の長編作品復帰もアナウンスされました。

近藤監督が作画監督を務め、ジブリの名を世界に知らしめた『もののけ姫』までの軌跡を振り返ってみるには、ちょうど良いタイミングではないでしょうか。この回顧展で、近藤監督が遺してくれたジブリの魅力を再確認できるはずです。

故・近藤喜文監督。宮崎、高畑両巨匠の作品を支えただけでなく、監督を務めた「耳をすませば」でジブリの歴史に新しい1ページを作り出しました。撮影:南正時

作業していた机の再現を取り囲むように、近藤監督の活動の軌跡を辿ります。※写真は別会場の物になります

展示されている原画、イメージボード、スケッチは近藤監督、ジブリのアニメーションが歩んできた歴史そのもの。※写真は別会場の物になります

アニメーションの仕事に打ち込んだ生涯と作品を、次の世代に伝える展覧会です。※写真は別会場の物になります

「この男がジブリを支えた。近藤喜文展」(巡回展)

開催期間:~8月31日
開催場所:空想とアートのミュージアム 福島さくら遊学舎
開催時間:10時〜17時(受付は16時30分まで)
休館日:展示切り替え期は休館。休館日はホームページで随時、告知。
入場料:一般¥1,200 中学生以下¥600
※オープニングセレモニー&ギャラリートーク


6月3日(土) 10 時~オープニングセレモニーを開催。
セレモニー終了後は「火垂るの墓」「耳をすませば」など数多くのジブリ作品で制作を務めたスタジオジブリプロデューサー・田中千義氏によるギャラリートークツアーを開催のほか、先着 300 名様にポストカードをプレゼント。

上映イベント スタジオジブリ作品の上映イベントを開催。

※詳細は公式サイトで

http://fukushimagainax.co.jp/